116 帝国のギルドマスター
帝国のギルドマスターとの通話回
『・・んー、あー、マイクテス、マイクテス』
「おー、無事つながったようじゃな」
現在、アルはザップリンと共に、ギルド間での通信限定魔道具とやらで、バンダンガ帝国のギルドマスターと連絡を取ってみた。
机の上にて輝く水晶の中には、帝国のギルドの室内と思わしき場所が移っており、そこから帝国のギルドマスターの男性の顔が映りこんでいた。
「この魔道具すごいな・・・・固定式なのが残念だけど」
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「連絡用水晶級通信機」
星4クラスの魔道具。
固定した座標同士での同じ魔道具としかやり取りができないという欠点があるのだが、距離や天候に影響されず、30分間だけの映像通信をつなげることができる。
30分間だけなのは安全装置が付いているからであり、30分以上つなげると中の仕掛けなどが焼き切れてしまうためである。そのため、30分経過同時に自動的に起動を停止させ24時間使用不可能になる。
消費する魔力は少ないが、その使いにくさゆえに、ギルド間での連絡用にしか使用されない。
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欠点は多いが、テレビ電話のようだし、むしろ現代のよりも画像が鮮明でリアル感があるのでより上かもしれない。
『お?ザップリンの爺ちゃん、その後ろの青年はだれだ?』
「ああ、公認モンスターの神龍帝のアルじゃよ」
『へー、公認モンスター・・・そっちが決め・・・・んんんん?はぁぁぁぁぁぁっつ!?』
ザップリンさんの言葉がしみこむのに時間がかかったようだけど、わかったとたんに驚愕の声を上げる帝国のギルドマスター。
『まじで?まじでまじで?公認モンスターかよ!』
「落ち着けサイトウよ」
慌てふためくサイトウとかいう名だったらしい帝国のギルドマスターをザップリンさんは落ち着かせた。
『ふー・・・お見苦しいところを見せちまったのをお詫び申し上げるぜ、神龍帝とやら』
「いや、心の中で面白いと思えていたからべつにいいかな」
というか、この人相手が公認モンスターだと知って驚いていた割には、すごいざっくばらんな話し方である。
『ザップリンの爺ちゃんから話は聞いているからな、神龍帝はこのぐらい気楽な話し方のほうが良いんだろう?』
ああ、なるほど。あらかじめ聞いていたことがあったのか。
『とりあえず、改めて自己紹介するぜ。俺はバンダンガ帝国の冒険者ギルドマスター兼帝国の元第5皇子でもあったサイトウ=バンダンガ。あ、元だからバンダンガはなくていいか』
「元第5皇子?」
まさか第5皇子が冒険者ギルドのギルドマスターをしているのかよ?
・・・と、ここで思い出した話で、帝国の皇帝は子供たちの教育方針は自由らしく、基本的に縛るようなことをしないらしい。
で、そこで次期皇帝になりたい人はそれ相応の勉強をするらしいが・・・・・
『俺の場合はな、はっきり言ってそんな座は入らねぇんだ。こうして自由気ままに生きているほうが良いと思ってな』
「あー・・・なんかわかるな。自由に生きていたいっている気持はよーくわかる」
『だろ!!この世はしょせん弱肉強食、気ままに生きて、生きのこって自由にしていたいんだよ!!』
「うんうん、気ままに生きたいとかよくわかるな」
・・・・前世の時もそういう感じにざっくばらんに生きたいような気持があった俺と、サイトウさんはどうも気があって話し込んでしまって・・
『でな、そこで俺は
ブツゥン
「あ」
「・・・時間切れじゃな」
・・・・通信制限の30分を超えてました。しまった、意気投合しすぎて当初の目的を忘れていたよ。
よく考えたら、ここで話さなくても転移魔法で帝国へ向かって、そこのギルドに行けばいい話だったかも。
なので速攻で俺はザップリンさんを連れて、当初の目的であったことを話しに行くのであった。
しかしまあ、長話防止機能としてはいい方法かもしれないな。前世でも近所のおばちゃんとか話が長かったし、こういうのが欲しかったかもしれない。
・・・ここでアルは気が付いていないけど、最初の部分でサイトウさんって何を言っていたかな?
この世界に、その道具はあるのか・・・・?
というか、最初から向かえばよかったような気がする。ザップリンさんは自然と巻き込まれて連れて行かれているけどね。