115 面倒ごとが来そうです
忘れさられていた可能性があるかも。
「今日はどうしようかなー」
屋根に上り、空を見上げながらアルはつぶやいた。季節的には初夏から夏本番頃になるだろうが、今日はどうやら過ごしやすい気温である。
またこの周囲を飛行して見回りとか?
いや、いっそのことどこか面白いところがないか探しに行くのもいいかもしれないな・・・・
ゴーレムタウンの方に出向いて、新しいゴーレムの開発をファーストと相談したり、アララン共和国やベースタックへ行ってもいいかもしれない。
活動範囲が広がってきていることもあり、考えてもなかなか決まらなかった。
「・・ん?」
と、ここでふとアルは気が付いた。
・・・・そこの木の陰に3人、木の上の方に2人・・・何者かがいるよね。確実にだけど、こういった感覚とかも最近結構鋭くなってきたような気がするな。
なんとなくだが、視線を感じたのでちょっと気配を集中して探ってみたらそれだけの人数がいた。
隠れているようだがバレバレである。
しかし、何者までかはわからないし、ここは気が付かないふりのほうが良いか?
でも・・・まぁ公認モンスターである俺の住処に無断でなおかつ隠れて見ている時点で十分不審人物たちだし、ここは捕らえてしまったほうが良いかな。めんどくさいけど。
「・・・『麻痺』」
ぽつりとつぶやいて、毎度おなじみの魔法でその視線の人物たちに魔法をかける。
ドサドサドサっとあっという間に隠れていたやつらがぶっ倒れて出てきた。
この魔法って本当に便利だよ。加減さえ間違えなければ殺さないで済むし、結構簡単に相手を無力化できるからね。・・・この魔法も十分チートかもしれないけどな。
「さてと、こっそりと伺っていたやつらの顔でも拝見いたしましょうかねぇ」
立ち上がり、屋根から降りて俺は痺れて動けない不審人物共の確保に動くのであった。
あ、こういうやつらって奥歯の方とかに毒が仕込んで合って自殺するようなものが居たりする可能性もあったので、出来ないように素早く迅速にです。
縛り上げてみたところ、5人全員迷彩服の様なものを着こんでおり、見事に痺れて体の自由が利かないようである。「神龍帝の威圧」を使わなかっただけでもありがたく思え。失禁するとかそういうやつがいたりするから、ある程度の情けだよ。
まあ、この魔法自体も結構凶悪かもしれないからね・・・・・
「なーんか俺の事を探っていたようだけど、お前らってどこの者たちだ?」
まずは、簡単に目的を吐かせましょう。
「「「「「・・・・・・・」」」」」
全員黙り込んでいて、黙秘を決め込むようである。
念のために奥歯の方を「鑑定」で毒物がないかを調べてみたらあったので、とりあえず解毒剤で無効化しておきました。ゴーレム製そこそこ万能解毒剤、金貨2枚。「そこそこ」なのは、味を優先したからである。・・・・アレはひどい味だった。
まあ、自白しないようだし、このままギルドに連行するもいいけど「鑑定」で調べたほうが良いよね。
一応名前と称号だけ確認すべきかな。HP,MPは抜かしておいてっとスキルも特に良いものは無さそうだしな。
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名前:ギャズリン
称号:「バンダンガ帝国第2諜報部隊所属」
名前:ガストリブ
称号:「バンダンガ帝国第2諜報部隊所属」
名前・・・・・
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「・・・なるほど、帝国の諜報部隊か」
「「「「「!?」」」」」
バレたのが驚いたのか、痺れながらも5人とも驚きの目でこちらを見た。
確か、帝国って去年あほバカくず外道第2皇子の・・・馬鹿野郎皇子だっけ?名前は忘れてしまったが、まあそれは別にいいとして、訪れたことがあったな。
あの時はアリス姫に迫ってきたあの第2皇子のことで調べたことがあっただけだから、まだあまり詳しくわかっていないんだよね。
とにもかくにも、大胆不敵にも公認モンスターの住処に諜報部隊とか・・・・何を考えているのだろうか?
「と言うわけで、こいつらを引き取ってください」
「・・・まったく、これはこれでこいつらは大馬鹿じゃな」
ザップリンさんのところへと移動し、ギルドにこの諜報部隊の人たちを運んできたのを見て、呆れたような声をザップリンさんは出した。
「公認モンスターのところに潜入して、それで四肢が無事なのもよかったが・・・・過去に似たようなことをやらかして、不興を買って国を半壊させた例もあるというのになんて愚かなことをしたんじゃよ」
え、そんなことをしたやつもいたのか。まあ、公認モンスターって、無茶苦茶な力を持つ奴がなる容易なものだし、出来てもおかしくはない。というか、出来るやつしかいないような気がする。
「『鑑定』のスキルで調べたら、あいつらどうもバンダンガ帝国の者たちのようだしな・・・・一体何を考えて送り込んできたのやら」
ザップリンさんが先ほど述べた例のように、下手すると帝国が地図から消える可能性もあった。主に俺が原因でな。まあ、今のところはそうする予定はないけどね。いちいち力でそういうことをするのもめんどくさいし、何か間違った力の使い方だと思えるからね。
「まあ、あの者たちを白状させればすべてはっきりするじゃろうが、ああいう手合いの者たちはなかなか白状はせぬからな」
一応ゴーレムタウンの方に「拷問」などのスキルを持ったゴーレムたちもいるのだが、まだまだ未熟だし、ここはやはりプロの方々に任せたほうが良いからね。
「ここは、一番事情が詳しい者のところへ連絡を取るほうが良いじゃろうが・・・・当事者だし、アルも少々時間をくれぬか?」
と、何やらザップリンさんがそう尋ねてきたので、特に予定もなかったのでうなずいた。
「では、ギルド間での通信用魔道具を起動して、バンダンガ帝国のギルドの方に連絡を取るかのぅ」
・・・・そういう系統の魔道具があるのか。見せてもらっている間に覚えておいて、今度作ってみようかな。流石にオーバーテクノロジー気味になる可能性もあるけど、トランシーバーみたいな感じにして、アリス姫とラン王女にでもあげよう。これでいつでもしゃべることが出来そうだしな。
とにもかくにも、いつの間にかザップリンさんの机の上に水晶玉の様なものが出てきて、通信を始めるのであった。
バンダンガ帝国のギルドマスター・・・・以前、ザップリンさんがあらかじめ連絡をしていたけど、結局アルとは面識がないままだったかな。実に何話ぶりの出番となるのだろうか。というか、声だけの登場だったか。