111 タウンの案内
案内するのはだーれだ?
「ずいぶんとゴーレムタウンがすごくなっていますね・・・」
ゴーレムタウンを見ながら、アリス姫が感嘆の声を漏らした。
今日は久しぶりにアリス姫が来たので、せっかくなので一緒にゴーレムタウン全体を見て回ることにしたのである。発展途上中の様子見も兼ねてであるが。
移動方法はアリス姫専用のエミューで、ゆっくりとタウン全体を見て回れるように道順を書き込んでスタートです。デートっぽいけど、デートにならないような気がする。
「ここはゴーレムタウンの鍛冶師区画で、様々な鍛冶のスキルを得ているゴーレムたちが、自身のスキルの成長のために色々と生産に励んでいるんだよね」
カァーン、カァーンと金属をたたく音がして、見るとあちこちの鍛冶している場所に様々な製品が出来上がっていた。
剣やナイフ、包丁やフライパンなどと種類が多く、どれもかなりの出来前である。
「付与することができる『魔法鍛冶師』のスキルを持ったゴーレムには、一応『錆防止』、『強度強化』などと言った、生活に役に立つ様なものを付与していってもらっているんだよね」
「もう、これ一般家庭の物以上の質なんですけど・・・」
出来上がった包丁の一つを見せると、アリス姫は驚きでもはや呆れを通り越していた。
「ここは牧場区画で、最近になって仲間入りしたバッホーンたちが放牧されていて、ミルクを取っているのさ」
「バッホーン以外にも・・・あれって馬ですか?モンスターですよね?」
よく見るとわかるが、数頭ほど新たな仲間も実は先日入って来ていた。
「『シーホース』とかいう馬型モンスターの一種で、馬以上の馬力を誇るようなんだよね」
簡単な説明をしつつ、そのモンスターの姿を見る。
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「シーホース」
馬に似ているが、一回りも二回りも普通の馬よりも大きく、足ががっしりとしているモンスター。群れで行動し、あちこちを駆けまわる。常に活発に動いているのは心が叫んでいるからとも言われている。
シーホースは通常の馬以上の名馬とも言われており、欲するものはいるのだが知能が高く超早く逃げるのでなかなかとらえることができない。
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「ひひーんばひ!」
「ぶるるるる!!」
全員生き生きとしているけど、実はこのシーホースたちって当初であった時は死にかけていたんだよね。
たまたま峡谷の様な場所を飛んでいた時に、見かけたんで治してやったら懐かれて、ここに皆持ってきたのである。
「一応、この牧場はゴーレムたちが管理をしているけど、群れの統制はそれぞれのリーダーがやっているんだよね」
バッホーンの方は、唯一のオスであるバッホーンにやってもらっている。意外と男気があり、鑑定して称号を見てみたら、「ハードボイルド」とかって出たけど・・・・どうなんだろうかそれは?
なので、名前を付けえた分かりやすく「ボルド」と名付けた。
まあ、群れ全体を見ているようだけど、ちょっとメスのバッホーンたちに尻に敷かれているのはどうなのだろうか。
シーホースの方は、実はシーホース以外が混じっていて、そいつが群れを率いていたんだよな。
「皆物凄く元気そうでいいで・・・・・え?」
アリス姫はどうやら気が付いたらしく、驚きで目を見開いた。
その視線の先にいるのは・・・・・シーホースよりも小さいが、それでもきりっとした角が生えた白馬・・・
「『ユニコーン』!?」
そう、シーホースの群れを連れてきたついでにちゃっかりとそいつが混じっていたんだよね。
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「ユニコーン」
めったに出会わない馬型のモンスター。その角は霊薬とも言われ、ありとあらゆる薬の材料の元となる。
その希少性ゆえに、狙われることが多いのだが他の馬型のモンスターに交じって助けてもらったりしている。その代わりに、仲間が傷つくと治療をするという共生関係を持つ。
美しい処女に駆け寄ってくるが、そうでない場合は問答無用でその角でぶっ刺してくる。ただし、知能が高いので、かなわない相手には絶対服従を誓うらしい。
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「まあ、おとなしいからね。・・・俺の方を見て服従の体勢とやらを取ったけど」
野生の勘で神龍帝である俺にかなわないと悟って速攻で服従の体勢として器用に土下座していた。馬ってああいう感じの土下座するんだ・・・というか土下座って世界共通のモノなのか?そこがすごい気になる。
まあ、別に何もしなければ文句はないので、ここで他の群れとの件が起きないように見てもらっているからね。
ついでに言えば、あのユニコーンはメスである。名前は「プラチナ」にしているのだが、どうも種が違うのにバッホーンであるボルドの事が好きな様で、見かけた瞬間にボルドは猛ダッシュで逃げて、プラチナは速攻で追いかけていった。
・・・苦労性な牛だよな。ボルドの場合、他にいるバッホーンもメスだけだし、ある意味ハーレムの末路を見たような気がする。
男として、なにかこう同情するようなものを感じた気がする。すんごい哀れな方の意味でな。
とりあえず、頑張れボルド。
次に、俺達が訪れたのは・・・・
「ギュァァァァ!!」
「ゴー、ゴー、ゴー」
お腹が減ったらしく、ちょっと不機嫌なワイバーンをなだめているゴーレムたちを見ていた。
ここはワイバーンなどの空を飛ぶ動物専用宿舎である。
「なぜここにワイバーンが・・・・」
「ああ、先日どうやらここを襲ってきたやつらしいけど、ゴーレムたちが捕らえてこうしてここに置いているのさ」
まだここにはワイバーンが1匹しかいないけど、次にもし別の飛ぶ奴が来たら、グリフォンあたりが来てほしい。俺も一応魔法や元の姿で飛べるけどさ、ああいうモンスターに乗って飛ぶのもいいじゃん。
・・・今のところ、他に空からやってくるものと言えば普通の鳥程度であるが。そう何度も遭遇しないっていうのが、世の中が甘くないということを示しているよな。
「農業区画は、今のところ育てている作物の幅はそこまで多くないんだけどね」
「いやこれもうすごいことになっているんですが・・・・・・」
語彙が尽きたのか、すごいとしか言っていないような気がするが・・・・まあ、そうなるかもね。
今のところ、少々地面の関係上、適切な作物が限られるんだよなぁ・・・・そのあたりの調整が難しいので、ドランや農業に従事しているゴーレムたちに丸投げである。
そのあたりは本当に彼らの世話になっているんだよね。所詮、知識はあれどもそこまで詳しいわけでもないしさ。
「一応、ちょっとばかし改良して鉱山なんてものまでできたのはどうしようかと思ったけどね。今ではタウンの鍛冶師の方に供給ができる場として成り立っているんだよな」
「どこをどうしたら雲の上に鉱山ができるんですか!?」
驚きながらツッコミを入れるアリス姫。
・・・俺もその辺がよくわかっていないのが現状である。
いやね、適当に土とかを作っていたらいつのまにか鉱山ができていたんだよ。どうできたのかもわからないし、しかもとってもとっても新たな鉱石が出てくるという謎の鉱山である。
ちょっと「創造魔法」とか「セブンズブレス(土)」などを使用したのが原因かな?魔力がどうのこうのして変化したと考えたい。というかそれ以外では説明がつかない。
まあそのおかげで鍛冶師のゴーレムたちへの貴金属の供給ができるし、「穴掘り職人」なんてスキルも発見したしね。いや本当に予想外でした。
チートな俺自身もよくわかっていない部分があるからな・・・・・・・。
「どうだったかな?今日このタウン全体を見て回ってさ」
全体を大体見終えて、俺達は一旦地上の方にある自宅に戻ってきた。
やっぱこっちのほうが落ち着くなー。
「そうですね・・・アルがもうとんでもない人でアルと改めて認識しましたよ」
少し頭を抱えて返答するアリス姫。
そこは人ではなくモンスターだと思うが・・・・まあいいか。
「でもまあ楽しかったですよ。結構面白くて、見たことがないようなものが多かったですからね」
そうアリス姫が微笑んで・・・・・ちょっとドキッとしたな。
モンスターになっても、この中身は一応人間だからかな?
とにもかくにも、今日は良い日だったと思えるのであった。・・・しかしまあ、商業ギルドとかにもちょっと話を通して見ようかな。
生産してばっかりなのもなんかもったいないし、需要と供給、既存の商売人たちとバランスを取りつつ、売買できたらいいような気がするからね。
その前にきちんとザップリンさんに相談するがな!!
これってもう「タウン」と言っていいのかな?
とにもかくにも、次回から商業関係に入る予定。
のんびりと過ごすためにも、こういう取引とかも重要だからね。