110 ゴーレムタウンのとある日常風景
ファースト視点から入る感じかな。
コーン、コーン、コーン・・・
雲の上のゴーレムタウンで、建築を担当しているゴーレムたちが家を建てていた。
ここにいるのはゴーレムたちと家畜などしかおらず、人が住むわけではないのだが「建築」のスキル向上のために立てているのである。
出来上がった家は、土台から一旦くりぬかれてアルが回収をあとでするために特定の回収場へと運ばれていく。
「・・・お、『建築士1級』、『プロの大工』のスキルになりましたネ」
彼らの様子を見て、そのスキルがどう成長しているのかこのゴーレムタウンの責任者も兼ねており、ここの始まりのゴーレムともされるファーストは、スキルの成長する瞬間を見た。
ゴーレムたちは、アルが作成した者からファーストの手によってつくられたものと多岐にわたり、それぞれが内蔵されたカートリッジにあるスキルを成長させてここで生活をしている。
動力も改良されていき、今では魔力電池の小型化までをしてだいぶ自由に動けるようになってきた。
ファースト自身も自学自習をし、自身をより改良させて、生み出していくゴーレムや、すでに生み出したゴーレムたちをさらに改良させていっていた。
・・・・ゴーレムとして生み出された者たちには、通常与えられた自身の命令をこなすことしか頭にない。与えられている命令としては「己のスキルの成長」がある。
だが、ファーストだけは違った。
もともと、ゴーレムを生み出していき、改良を加えるために「考える」という基本も与えられており、そこから成長していった結果・・・・自身の意思が確立していった。
自身はゴーレムであり、生み出してくれた主である神龍帝のアルに仕えるべき存在であるということもしっかりと理解しており、主従としてはっきりさせていこうという考えもあったのである。
ただ、一応よくあるロボット映画の様な反乱の可能性も恐れて安全装置のようなものが取り付けられているのだが、それでもファーストは自身は主であるアルのためにと行動概念を確立させていた。
「234号機の関節部の修繕、178号機のカートリッジの交換・・・仕事は山積みデスネ」
たくさんの仕事を請け負いつつ、他のゴーレムたちの面倒を見るファースト。
「センサーの改良・・・・もありますけど、ちょっとリボンの作成もありましたし、、試着してみましょうかね」
中性的な外観に設計はされてはいたが・・・・・中身としては、女の子のような部分が芽生え始めていたのかもしれない。
時間が経ち、昼頃になった時であった。
「うーん、建築関係のゴーレムの稼働率を少々下げて、別のスキルの発展をとげさせ、」
「ゴゴゴゴゴゴーーーー!!」
「どうしたんですか、29号?」
各ゴーレムの、稼働状態の書類をまとめていたところで、ファーストが作った29号機のゴーレム(伝令担当)が焦った様子で来た。まだ発展途上中のものが多いので、言葉が完全に話せていないのだが、その内容はその様子から理解しやすくなっていた。
「ワー、シュー」
「ええ?ワイバーンの襲撃ですカ?」
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「ワイバーン」
大きな翼を付けたトカゲの様な姿を持つモンスター。ドラゴン系のモンスターに見えるが、実際には亜龍と呼ばれる分類となり、ドラゴンとは根本が違う。
ブレスは吐かず、空気弾を飛ばしてくるが、その足と手の爪には猛毒があり、大変危険。
しかし、空の上では機動力があるのだが、地上に降りると一気に弱体化する。
・・・なお、肉はそこそこウマイ。タレをつけて一気にカリッと焼き上げるのがおすすめ。
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ここ、ゴーレムタウンは雲の上にある場所である。
この場所に来るには、アルのように「転移魔法」もしくは飛行してくることで可能になるのだが、どうやらワイバーンが迷い込んできたようで、あちこちに空気弾をぶつけて被害を出しているようであった。
「対空設備は確か設置中でしたが・・・?」
「イー、ズー、ヨー、トー」
「設備の設置場所には行かないで、やや避けて飛んでいた?なかなか知能がありそうな個体デスネ」
ここでファーストはフル稼働して考え、素早く結論を導き出した。
「では、捕獲したほうが良いでしょウ。そのような賢いワイバーンの個体は利用価値がありマス」
「へー」
「編成ですカ?スキル『一流狩人』、『毒薬剤師』、『挑発屋』のゴーレムたちで向かわせて、痺れさせて、主が最近ふと見かけて取ってきたというスキル『調教師』をカートリッジに備えたゴーレムに調教してもらいましょウ」
「リー」
・・・・・数時間後、ワイバーンは無事捕らえられた。
「ギャゥゥゥゥゥ・・・」
もう叶わないと理解しているのか、意気消沈をしているワイバーン。
そのワイバーンは、ゴーレムによって連行されていったのであった。
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3日後。
「え?スキル『竜騎士』なんてものを付けたゴーレムが出た?」
「ハイ、ワイバーンを先日捕獲して、この際空の安全を確保してもらう警備に刺せようかと思っていたところ、世話をしていたゴーレム350号にそのようなスキルが付き、ワイバーンに乗って自由自在になってマス」
「ワイバーンはドラゴンとは違うような物らしいけど・・・・見た目が似ているのが原因かな?」
「そのことで、調べたところその可能性が大きいカト」
神龍帝であり、このゴーレムタウンを作ったアルはたまに来ているのだが、まさかのワイバーンの捕獲と、その新スキルに驚いていた。
うーん、そういうのってちょっとあこがれはするけど・・・・俺も一応ドラゴンだし、そのスキルを持っていてもなんかなぁ。
「・・・そのスキルを付けたゴーレムたちを念のために増やしておくか。このゴーレムタウンは空の上にあるし、万が一のための空軍みたいなものを持っておいたほうが良いかもな」
そうしたほうが、俺が留守の時に何かあっても、ある程度の戦力までなら対抗できそうだしね。
しかし・・・・こうして考えるとだんだんこのゴーレムタウンが某天空の城並みの戦力を持っちゃっているよな。この際、ゴーレムたちの活用方法をいったん見直すほうが良いのかな・・・
「地上の方にある国とかで、店を出してみて商売でもしてみるか?」
一応畑もあるから、新鮮な作物等を売買できそうである。
でも、既存の店の経営を圧迫しそうだから、そこのところはザップリンさんに聞いてみますか。
この際、商人ギルドなどの他のところにも行ってみるのも悪くはないかもしれない。
大空でゴーレムを載せて飛び交うワイバーンを見ながら、俺はそう考えるのであった。
さて、そろそろアルも一つの転機を迎えそうな予感。
にしても、ワイバーン意外に空を飛ぶモンスターって他に何がいたかな?その関係も出してみたいような気がする。
・・・実質、ゴーレムタウンの所有者はアルだが、経営者兼生産者はファーストであるかな。