102 海の上です
こういう日もあるさ
「たまにはこういうのもいいなぁ・・・・」
神龍帝・・・アルは現在、海上を人化を解除した本来の姿そのままでぷかぷか浮いて漂っていた。
原因としては、人化した状態で雲の上のゴーレムタウンから落ちたことである。
・・・まさかね、しっかり土台を固めていたつもりが、一部が生の雲というか、ただの雲の状態のままとは思わんかった。
ずぼっと底が抜けて落ちて、慌てたもんで人化を解除しちゃってドボンである。
まあ、この程度で死ぬわけでもないし、この際力を抜いてぐでっと浮かんでみることにしたのであった。
こうして力を抜くと、大きなこの神龍帝の身体でも海に浮く。
浮力とかは結構あるようで、それなりに波にゆらゆら漂う感じが心地よい。
あ、一応もうすでに問題個所はゴーレムたちが封鎖しているだろうし、一応万が一のための修理部隊が何とかしているであろう。
「しかし・・・こうしてみると本当に何もないように見えるんだよな・・・」
雲の下に落ちて見てわかったけど、ちゃんと雲の上にいないとゴーレムタウンは下からは認識できない。
晴れやかな青空が広がり、雲一つ見えないのである。
自分で見えないように施しておいていうのもなんだけど、これ本当に存在に気が付く人は出ないような気がする。
「気球とか飛行機とかそう言ったものがあって、あそこに突っ込めばわかるだろうけど・・・・・・見かけないしな」
そういう類の発明と化されていそうなものだけど、不思議とそう言ったものは見かけない。
「・・・あっちには帆船を見かけるけどなー」
ふと、横の方を見ると遠くの方に大きな帆船が見えた。
一応俺には気が付いていないようで、風を受けて帆がぶわっと膨らんで進んでいるのがよく見える。・・・俺のこの状態の視力っていくつだろうか?視力測定の基準がいまいちわからないから測りようがないしな。
と、よく見るともう一隻ほどあった。
こちらはもう片方の船に比べて一回りほど小さめだが、黒い船体に、ドクロの旗がはためいて・・・・ん?ドクロの旗?
「海賊船かよ!?」
まさかの海賊初遭遇・・・いや、違うな。まだ両船とも俺に気が付いていないようだし、遭遇したとは言わないか。
観察していたら、何やら砲撃が海賊船から打ち込んできて、大きな帆船の方に襲い掛かった。
どうやら海賊船はあの大きな船を襲っているようである。
「あれ?」
ここで俺はもう一つ気が付いた。
何か勘的なもので海に潜って。両船の真下の方をよーく見て見ると・・・なんか白い触手のようなものがじわりじわりと近付いて行っている。
「『鑑定』」
この距離で可能かなと思ったけど、なんかできた。
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「クラーケン・ベビー」
巨大なイカの化け物であるが、まだ幼体のクラーケン。成体は全長100メートルなのに対し、幼体なので30メートルほど。成体まで育つのに1年かかる。幼体時代はギガントオクトパスの餌食になりやすく、成体になれば幼い時に脅かされた恨みとして逆襲をかける。海上にある物なら何でも襲って、自身の栄養とする。
その身は微妙な味わいである。
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「・・・・30メートルでベビーかよ!!」
そこまででかい赤ちゃんなんて聞いたこともないわ!!あ、俺もよく考えれば転生して一年たとうとしているからドラゴン的に考えれば俺も幼竜なのか?
にしても、戦闘中の船に襲い掛かるとは漁夫の利を狙っているようにしか思えないな。
ベビーながら、末恐ろしいクラーケンの子だな・・・・って、感心している場合かな?
海賊船も襲われるようだし、この際あっちの海賊に襲われている船だけを助けたほうが良いかな。知らぬふりしてこのままにしておくのも後味悪いし。
しかし、味が微妙なクラーケンか・・・・うまい奴だったらやる気が上がったのにな。
そんな事を思いつつも、俺はとりあえず見捨てておけないから助けに向かうために羽ばたいて船に向かうのであった。
襲われている船の人の命>クラーケンの身>海賊の命
こんな感じかな?
しかし、これよくよく考えたら船の人が余計にパニックになるような気がするのだが・・・・