呼称決定
3か月ほど更新が無くすみませんでした。
その巨体がこちらに来るよりも早く、小学生たちの方を向いて叫んだ。
「っ…!にげ」
ドォォォォォォォン!!と巨体が着地したことを知らせる轟音が空気を割るように響き、小学生たちに逃げるよう叫んだ声はその音によってかき消される。
鳴り響いた音の方向を咄嗟に向いた時には既に大きな人の拳のようなモノがこちらに向かって突っ込んで来ていた。
その拳との距離は目視でおよそ5メートル。予想外だったことと向かってくる拳の威圧により足がすくんでしまい避けることができない。
拳を眼で捕らえてからはこちらにやって来るスピードがゆっくりになっているかのように感じる。まるで焦らしているかのような死へのカウントダウンのよう。
顔面への直撃を覚悟したその瞬間—。
「クッション!!」
隣にいた宗谷さんの手首が白く輝き、俺の目の前にまるで抱き着いたが最後人の人である全てを腐らせ堕落した有機物にしてしまうかのような人をダメにするクッションが目の前に現れた。
宗谷さんが手首につけた摩訶不思議な『妄想を具現化する機械』によって現れたクッションだ。
拳は突如として現れたクッションに追突し、その拳の衝撃をクッションが拡散して無効化する。拡散できなかった衝撃はそのまま拳に向かって集束して拳を大きく跳ね返す。
それと同時に宗谷さんの手首の輝きは消え、目の前の今にも抱き着きたいクッションも消える。
跳ね返されて大きく後退した巨体が再び向かってくると思い身構えたが、再度突撃してくるような気配はなさそうだ。
「ありがとう宗谷さん!」
「宗谷さんってのは長いから気安くムーちゃんでいいよ。女の子同士気楽にね?」
「いや、変態でいや」
この時、俺の中で宗谷さんへの呼称が『変態』で固定した。
「…で、変態。あれ何?」
目の前に佇んでいる巨体を睨みながら変態に問うた。
巨体の大まかな形は人である。全身ボディビルダーのように筋肉が隆々としており、首元には何やら布を後ろから掛けるようにしているように見える。
顔は口元が大きく前に突き出し、目玉がギョロリと見開いている為爬虫類を連想させる。
問われた変態は頬を描きながら答えた。
「ははは、私ゃアレとは初対面よ。何だと聞かれても倒さなければならない敵としか言えないね」
「倒さなければいけない敵…。絶対能力を手に入れたばかりの時に出会う敵じゃないだろあれ」
「だからといって逃げる理由にはしないでよ。恐らくアイツの狙いはあの子供たちと君だ。君なら逃げられるだろうから大丈夫と思うが、その場合あの子たちは私の力では守れない。力が足りないってのが大きいんだけど……あの子たちから信用されてないってのが動き難いんだよなぁ…必死に守ってるのになんだか嫌われてるのは初対面が理由なのか、そんなにこの美女は信用できないのかなぁ」
そりゃあ、おじさんみたいなのがこっちを見るなり襲ってきた…っていってたからなぁ。女性の皮を被ったおっさんがこっちを見てからやってくるのは小学生にとって恐ろしいんじゃなかろうか。
それに誰がみているのかわからない場所で大きく跳躍したぐらいだ、小学生と怪物とオッサン女子?だけの空間ならもっとえげつないしているような感もある。
「変態は向こうでなにやってたのさ…」
「ん…あのデカブツが小学生たちを追いかけるもんだからさ、腕輪の力で移動速度を上げてアイツと小学生の間に入り先に小学生を保護しようとしていただけよ」
想像するとなると自分たちの周りで筋肉とオッサンが高速移動を繰り広げて俺が先よと捕まえに来てたってことか…。
「…そりゃトラウマもん…」
「グバァァァァアアアアア!!」
突然、巨体が叫び出した。
小学生は驚き、更に強く小鳥に抱き着く。あの様子では小鳥は戦うことは無理だろう。
しかし何故突然叫び出したのだろうか。
「んー、『てめぇら話に夢中になって俺のこと忘れてんじゃねーのかい!コノヤロー!!』とでも言いたいのか…アラヨット」
”荒ヨット”?なんだいその語尾は?と聞こうと左を見ると変態は俺から離れるように横に大きく跳躍していた。
「ん?」
視界の左側で巨体が動くのが見える、すかさずそちらを向くと再度巨体が殴りかかろうとしていた。
変態の行動のせいで虚を突かれた。……これは避けられねぇ。
「あ!幼女を守るための身体なのに幼女を見捨てて逃げてしまった!話していると幼女に思えなかったからと言って幼女を助けないとは…おのれ…私!!」
安全圏に既に入った変態の声が聞こえる…。自身の安全を優先したことの反省中でこちらに気がまわっていないかもしれないからクッションの期待はしないでおこう。




