春スペシャル
普通の焼き飯だった。
焼き飯とチャーハンの違いは卵を先に炒めるかご飯を先に炒めるか…だったはずなので、この調理された後の姿を見ても見分けることは難しい。
ただ、母は普段飯を先に炒める。だからあれは焼き飯だ。
「いやあ、おいしかったね焼き飯」
今俺と小鳥は俺の部屋にいる。
俺は椅子に跨り、背もたれにへそを付けるようにして座り、小鳥はベットを椅子代わりにして座っている。
「あー、あの味に慣れてっからなあ…美味しいねって言われても俺にとっては普通なんだよな」
「なにそれ…むかついた。3発ほど殴っていい?」
「やめろ!今のお前に殴られると肉塊すらなくなる!」
「さすがにそれは言い過ぎなんじゃないかなー」
そう言いつつ数回殴るように拳を前に突き出す。顔はニコニコと笑っているのだが、突き出した時の音がシュシュシュと生易しいものではなく、ブォンブォンブォンとおぞましい音がする。
あれを受けたらただでは済まないだろうな。そのパンチは本気でやっているのか力を抜いているのか気になるところだが、後者だった場合のことを考えると恐ろしいので聞かないでおこう。
後者だったらとりあえず小鳥を怒らせる=死となる気がする。
「んー、じゃあ朝昼晩に食べる料理を変えるという目的で一日くらい私と真樹のお母さん交代してみる?」
「殺す気か?」
小鳥の母はとことん料理ができない。
いや、料理自体はできる。素材を加工して食品に仕立て上げるということは難なくできるのだが、その方向性が一般と比べてズレているのだ。
そういうのをひとまとまりにして考えて小鳥の母は料理ができない。
この前、オレンジジュースを作ったからと渡された飲み物はオレンジジュースと言われても疑ってしまうような奇妙な色だった。
どうやらただのオレンジジュースだと面白くないので自分流にアレンジしたそうだ。
断るのも失礼だったので飲んでみたのだが、その後の記憶が数時間ほどなくなっていた。
「ははは、冗談だって。あの料理は春家じゃないと耐えられないよ」
「春スペシャルを緋香里が飲んだ時すごかったからね…小鳥はよくあれを飲めるよな」
「慣れりゃ何とかなるよ、あれが春家の強靭な胃袋の源さ」
春スペシャル。小鳥が小さいころから飲まs……飲んでいるもので、それがあのでかパイの源なんじゃないか。と睨んだ緋香里が飲んでみたところ気分が数日間凹んでしまったという飲み物である。それをいとも容易く飲んでいる春家の胃はもう化け物だ。
「それで、真樹は試しに今日買った服着てみないの?それともまだ女装するつもり?着替えても女装だけど」
「…女装って言うのやめてくれ、恥ずかしいんじゃ」
結局、このままThe女の子の服装を着続けるより数段マシなため着替えることとした。
すこしゆとりのあるジーパンに薄手のパーカーというシンプルな構造に変身。
着替える間、小鳥は大の字になってベットに寝そべっていた。
「終わったぞ」
「おー、素材が良けりゃ服装の味が出せるものね」
「おい…」
小鳥は跳ね起きて体を伸ばす。
「さあて、私たちの能力の逆が何なのか考えますかー」
「んで、逆の能力が発現したとしてどのような能力かわからないし、外で試すか?」
「そーしますか。変な輩が着たら追い払ってやるから」
いや、追い払われる前に消えるんじゃねえの?と言ってしまいそうになったがなんとか踏み止まれた。
危ない、俺が消えてしまうところだった。




