帰宅
「ただいまあー」
荷物を抱えている為、小鳥に玄関のドアを開けてもらう。
鍵は掛かっていなかったことから誰かいるはずなので声で帰ってきたことを知らせる。
そして靴を脱ぐより早くリビングから母が姿を現してこちらに向かってきた。
「あーらあらあららまあまあまあ!おかえりいー!!変な人に会わなかった?こけたりしなかった?ちゃんと女の子の服変えた?」
「待てい!俺を何歳だと思ってんだ!高校生だぞ!」
「大丈夫ですよ…お母様、真樹の体はしかと守ってみせました。」
「でかした」
あ、燐華さんと出会って多少丸くなったかなと思いきや元に戻りやがった。
暴走気味だった母を止めてくれたのはありがたい。しかし小鳥が変な方向に向かって戻らなくなってしまったら見てるこっちが恥ずかしくなるのでそうならないようにしなければならない。
あまり小鳥と母を合わせるべきではないな…。
「それで、真咲ちゃん。いったいどのようなお洋服を買ってきたか見せてもらおうかしら?」
そういいつつ母は俺から服の入った紙袋を取り上げて中身を確認する。
ふと奥をみると玄関で何してるのやら…というような目で近づいてくる緋香里が目に入った。
「あれ、お兄ちゃんその紙袋のロゴ…B:Gのじゃん。大丈夫だった?」
「大丈夫だったって…値段とかそういうこと?」
「いやいや違う。でもその反応じゃなにもなかったのね、やっぱその外見じゃバレないよねー」
…恐らく追跡者がされたという改造のことだろうか。妹も知っているということはそこまでマイナーなことじゃないのだろう。
「あーそれがね緋香里ちゃん、バレちゃってるのよ。でも事情を離したら特別に~って」
「へーめずらし。バレたってことに驚きだけど、さらに男に売ってくれたとなりゃ開いた口がふさがらないね」
と、開いた口を閉じながら話す緋香里。
B:Gが何たるかはあとで緋香里に聞くことにしよう。
「あれ、男物?あとで女の子物に入れ替えとかないと」
心の声が漏れてるぞ。
「いやいやお母さんB:Gは女性服専門店だよ」
「そう、ならば仕方ない。…小鳥ちゃんが裏で工作して買わせてくれたんでしょ?ありがとねー」
「いやあ…そんな、気づいたらこうなっていただけで、私ゃ何もしてないですよ」
と、頭を掻きながら言う。
買い物は一から十まで小鳥の手のひらの上で遊ばれた感があるのだが、その点に関しては目を瞑っておこう。
それがなかったら明日、母の手によって俺の洋服ダンスはフリフリの女の子用の服に取り換えられていただろう。
そもそも小鳥はこんなに策士だっただろうか。今日を境に変化したという可能性が高いが、実は気が抜けてるのは演技で元々そうだったという可能性も………………………………いや、それはない。
さすがにあの気の抜けっぷりは演技に見えない。
ならば今日の変化によって生まれたものとなるはずだ。
今日何度思っただろう、小鳥変わったな。
「さて、真咲ちゃんのおめかしはあとでということで、君らちゃんと昼飯は食べたかい?」
「あークレープを食べた」
「だめじゃない!ちゃんとしたのを食べないと。昨日までの小鳥ちゃんみたく大きくならないよ。ほら、おっきくなるような料理作ってあげるから、二人とも手を洗ってきなさい」
俺男なんだが、大きくならなくてもいいんだが。
体が小さくなった影響か、あの量のクレープで腹は空いていない。食える気がしない。
そしてなんだか緋香里の目が怖い。理由はわかる、台所に向かう母さんを鬼の形相で睨んでいる。
「なんでそんな料理を私に作ってくれなかったの……………ばっきゃろぉぉぉおおおおお!!」
そう叫んで緋香里は自室に逃げ込む。ああ、これは数時間は出てこないな。
「ばかね…あの子。そんな料理あったら私もバインバインじゃないの。ただのでまかせなのに…」
台所から聞いてはいけない言葉を聞いた気がしたんだが、気のせいだろう。
気のせいではなかったとしても聞かなかったことにしておこう。
「おー、朝はリンゴジュース、昼はクレープ一個でお腹空いてたんだよね。さ、真樹手洗いに行こ!」
俺と違って小鳥はお腹が空いていたようだ。




