帰路
B:Gで衣服を数着買い、現在ショッピングセンターの入り口付近にいる。
本来であれば購入する数はこれの半数ぐらいだったのだが、千籐さんがお金を出してくれたことに加え、彼女の知り合いである男性の厚意で幾らか安くなった。
更に俺の現状が回復するまでサービスをしてくれるそうだ。そんなことをしてしまって大丈夫なのか不安になるが、ありがたい。
「さて、君たちが買いたいものは買えたところだしここで私は身を引こうかな」
「ありがとね燐華ちゃん、お金まで出してくれて。…そういえば燐華ちゃんはどうしてここに?」
「あー。暇だったのでな、変態が潜んでないか探していたところだ」
「え、そうなの!?ごめんね…私たちのために時間を取らせちゃって…」
「構わんよ。変態は私からどうも逃げるようでな、見つけることすら難しい。それを今回は見つけるどころか無力化及びこのメモ帳まで入手できた」
そう言いつつ懐から例の男から入手したメモ帳を取り出して軽く振り、その存在を強調する。
普段警戒されて彼女の前に現れないらしい変態集団が彼女の前に現れてまで記録し始めたとなると、そこまで俺の存在が興味深かったということになる。
そのことを考えるとなんだか寒気が…。
「ん、ちょっと待って…無力化ってことはさっきあの変なおっさんが捕らえたっていう追跡者はその…真樹のことを見ていた奴だったの?」
「うむ、性懲りもなくついてきおってからに…。あの男が無力化すると女性に手を出すことは無くなるのだが…なんともまあ、見るも無残な姿に…」
恐らく”改造”のことだ。千籐さんの顔を覗くとかなり嫌なことを思い出したような顔をしている、それほどまでに改造された人はひどい有様になっているのだろう。
そして小鳥は躊躇ないな…変なおっさんって…。
「千籐さん、因みに彼が言っていた”改造”って…どのような?」
「あーそれに関しては見たことがないからわからんな。ただ、改造された後の男の姿を見ればおおよそ理解できよう…。結城君の望むような回答ができなくてすまない」
千籐さんは俺に向かって頭を下げる。彼女の頭が丁度俺の目の前に振ってきた。
先の出来事に関してでもかなり有り難いのに、ましてやこのように頭を下げられてしまうと千籐燐華という人物のすばらしさに深く感心する。
こちらが頭を下げたい思いだ。
「いやいやこれまでのことだけでも十分ありがたいよ。それと…俺のこと下の名前で呼んでいいから」
俺は彼女の肩に触れ、頭を起こすように上に押し上げる。
千籐さんは俺に押されて頭を上げると「ん?」と頭を傾げた。
後半言ったことだろうか、その言葉に付け加えとして口を開く。
「これからも関係が続くんだろうし上の名前で呼ぶのもよそよそしいだろ?」
「なるほど…それでは今度から私のことを組長ではなく千籐ではなく下の名前で呼んでもらおうか、真樹君?」
「お、おう…せめてプライベートで呼ばせてくれ」
その時燐華さんの顔は魔性の笑みを孕んでいるように見えた。
その後燐華さんと別れた俺たちは帰路に就いている。
彼女はもう一度見回っってみてから、例の男がどうなったか確認しに行く。と言ってショッピングセンターの奥へと消えていった。
そして先ほどから小鳥の様子がおかしいのだが、何度聞いても「なんでもなーい」と返ってくる。
これ以上言うと言葉通りの鉄拳に襲われる危険性があるので言うのはやめよう。
「そいえばさ、小鳥」
「なんでもないよー」
「そのことじゃなく…。なんで俺女物買ったんだろ…」
ふと思ったことなのだが…なぜ俺たちはレディースを買うことになったのだろう、メンズを購入していれば早くことが済まされただろうに…。
メンズに似合う服がないからと言われれば一理あるのだが、似合う似合わないという事柄に関しては強いこだわりというものはない。
「あー、燐華ちゃんに言い包められちゃってたからねー。でもいいんじゃない?男物買ってきたとしてもおばさんに変えられるだけだから」
「あ、なるほど。でもなんで女物を買わせようとしたんだろ…」
「さあ」
そしてその後気になって燐華さんに聞いたことなのだが、買い替えられることを察した小鳥が燐華さんに伝えたことが原因らしい。
ただの暴力少女になったかと思いきや、そういった優しさが残っていたようだ。
買った服もメンズのように見えるが彼女たちの協力によって手に入れたレディースだ。もしものことがあっても守ってみせよう。
我が家の母親であれば手始めにレディースと言えば引き下がるはずだ。




