彼ら
「ふむ…なるほど、朝起きてたらそうなったと。」
「ああ。だから見間違えなんかじゃない」
小鳥が呼び止めたあと、二人で現状説明をして組長には納得してもらったところだ。
物分かりの良い人で助かった。堅物だったら「偽物がその名を語るな!!」と粛清を受けていたかもしれない。
そうそう、俺が食べる予定だったイチゴバニラクレープは会長に食べられている。『食べられている』というと誤解されるかもしれないが、俺から自主的にクレープを渡しているため組長に責任はない。
「そうだ、二つほど質問いいだろうか」
組長は顔の前でチョキのマークを示して聞いてきた。
断る理由もないため、「いいよ」と肯定する。
確かに物分かりのいい人だったとしても今話したことは現実味のないことだ。疑問に思ったことももちろんあるだろう。
「結城君、きみは一般的な目で見ると外見はどうしても女児にしか見えない。ああ、勿論先ほどの話を聞いていたから男だというのはわかっているのだが……………その、大丈夫なのだろうか」
苦虫を噛み潰したような顔をして質問をする組長。そこまで悩むようなことがもしかして…。
いや、あった。うん。さっき変態と遭遇して一つ屋根の下で会話をした。
そのことは既に話している、そこのことだろうか。そこであれば…………まぁ…………大丈夫だろう。
「そんな顔をして…大丈夫って何が?」
「いや…あれだ。原田とか、渡辺とか…。」
「あああっ!!!」
口をあんぐりと大きく開け、目を見開き大変なことを思い出したかのように驚いた。
いや、大変なことなんだけどね!!
目の前のことを見すぎたからか忘れてた!俺のクラスの男子九割危険じゃねぇか!!
「あやつらは改善のしようがないロリコンと聞く。女児にしか見えない今のきみではきっと………」
「あああぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」
俺は頭を抱えて蹲った。
考えたくない。考えたくない。かんがえたくない。かんがえたくない。カンガエタクナイ。
ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
全身から冷や汗が流れ落ちる。呼吸は荒くなり、視界が歪む。
彼らは恐ろしい奴らだ。今までその牙を向けられずに生活していたが、いざ向けれれるような状況となると平常にはいれれない。
彼らは狙った娘は逃がさない。絶え間なく接触を試みるが、たいてい組長率いる部隊に取り押さえられる。
しかし標的の娘は無意識化で何故か彼らに絶大なる恐怖を抱いてしまう。彼らに接触したが最後、溜まりに溜まった恐怖が開放し、思考を体を全てを恐怖に支配されその場に崩れ落ちる。
そして彼らの餌となってしまうわけだ。
どのようなことをされるかは加担したことがないので知らない。ただ、法に触れることはしていないらしい。
被害にあった娘らは恐怖によるものなのか何をされたのか覚えていない。
まず、彼らに接触したことすら記憶にない。
だが無意識化に根深く恐怖を植えてられ、接触する度に同じようなことをされる…そうな。勿論悪夢もたまに。
そんな娘の為に組長らが存在する。被害者を見つけては恐怖を抜き取り安堵を与え、自身の部隊に招きいれる。
彼らが暴れる度に彼女らは救いの手を差し伸べている。
「あぁ……ああああぁ。ああ」
そうだ、組長たちがいたがいた。
顔を上げ、大事なものを見つけたかのような目で組長を見ると組長は優しい目で俺を見ていた。
大丈夫、私たちがいる。と言っているかのように。
「すまない、恐怖を与えてしまって。しかし先に気づいていた方がよいと思ってな」
「ありがとう。もしもの時の心の準備ができた」
「その時は私たちを呼んでくれ。僅かながら力になろう。ただし二十四時間ずっとは守れない」
「私もいるからね!真樹」
「うん……」
小鳥は………暴れたいだけだろう。
だがそれでもありがたい。
組長も守ってくれるだけでもありがたい。
「まあ、一番厄介なのは大宮だろうな…」
組長がなにやら言った気がして聞きなおしてみたら「なんでもない、独り言だ」と返された。
途轍もなくアブナイ匂いだったのだが…。
「さて、きみ達は服を買いに来ているのだろう?これも何かの縁だ、私も付き合わせてはもらえないだろうか。」
組長は話を逸らすかのように手を差し伸べ問うてきた。
よろしく頼む。と言ってその手を掴むと組長はその手を引っ張て俺を立ち上がらせた。
「行こう」
組長はそう言ったが、後ろから感じるただならぬ殺気で「逝こう」と聞こえてしまった。すまん。
小鳥、やましいことはしてないんだからそんな殺気を立てないでくれ。




