口調
「はぁぁ………素顔が見たいのなら言ってください。これ作るのそれはそれで面倒なんですから」
そう言いつつ彼…いや、彼女?は零れ落ちた仮面の破片を拾い上げ、懐にそれを入れた。
証拠をなるべく残さない為だろうか…、それとも修理のためだろうか……。
「さてここから離れましょう、誰かが来ては面倒です。さぁ、こちらへ」
「あ、あぁ、うん」
かぶっていたフードを下ろしつつ先程までとは明らかに雰囲気の違う落ち着いた口調で淡々と話していく。
俺達はその差異に気押されて、曖昧な返事しかすることができなかった。
彼…?いや、彼女…?うぅむ………彼女?は俺達を連れて少し離れたマンションへと入っていく。
405号室と書かれた札の付いたドアの前に着くまで一言も言葉を交わさなかった。
「さて、ここなら普通に話せますよね?」
懐から取り出した鍵でそのドアを開け、俺達が中に入ってすぐさま男か女かわからなくなった元仮面の人が口を開いた。
「ああ。だけど、見ず知らずの男と女をこう易々と中に入れて良かったのか?」
「まぁ、可能であれば近くの喫茶店でお茶をしながら〜でも良かったのですが、なにせ聞かれてはマズイことも話すことになりそうだったもので。あと、貴方達とは既に言葉を交わし、名前を交わした。そして、共に竜を討伐した。見ず知らずの関係とは呼べませんよ」
この人物の言葉にはもう変態と呼べるような感じはしない。先程までのは何だったのだろうか…。
あと、貴方と名前を交わした覚えはない。一方的に言ったらだけの様な気がする。
「……ねぇ、真樹。こいつ今“マズイこと”って言った?」
「ん、あぁ、言ったな。それがどうしたんだ?」
あのような竜が出現すたことや想像を現実にするあの腕輪、俺達が開花させた能力等を知っている限り話してもらうため、そりゃあマズイことではあるだろう。
この事件について知っている重要人物だろうし。
「アヤシイよ!今すぐ警察に叩き出しましょ!」
「いや、言葉だけで判断するなよ」
「あの、すみません。仮面を割られてしまいましたし、お一つ…私の望み聞いてもらえないでしょうか?」
俺達の会話を片手を上げて制し、訪ねてきた。
「なに?真樹のお腹が見たいって言ったら頭蓋骨割るよ?」
「小鳥……そんな物騒な事言うなよ」
何度も思ったが…小鳥変わったな。
「いえ、それもそれでアリなのですが頭蓋骨を割られるのは困りますし、この口調に疲れたから元の口調に戻しても構わないか?ということなのですが」
……この冷淡の塊のような礼儀のある口調は作ってたのか。
恐らく初対面だからそう言っていたのだろうか、無理をさせたな。
それに構わず俺達はタメ口のように話していたのだが…。
「あぁ、わかった構わないよ」
「いぃよっしゃぁあああああ、これでだいぶ喋りやすくなったわぁ」
背伸びをしながら洩らした言葉はそれは随分と男性のような口調だった。
「ね、ね、そいえばさ、貴方って男なの?女なの?今の声を聞く限りじゃ女性のような印象だけども、口調は何か男臭いっていうか…」
ありがとう、小鳥。
躊躇って言いずらかったことを躊躇いもなく口にする。
そんな小鳥好きだぜ!
「あぁ、私?いや、今は女だよ」
「………今は?」
聞いて引っ掛かった言葉をそのまま口から流れ落ちるように質問を吐き出した。
「あー、んー、まぁ…な。ほら、お前らにその腕輪を貸したじゃんかよ」
…随分と口調が変わったことで。
「あれは私が作ったもんで、あれは空想具現化装置、空想腕輪、イメージブレスレットと言えばいいのかな。取り敢えず2号機だ」
なんだろう、話が逸れていく。
そして、サラッと自慢している感が。
「……あ、おっとすまん玄関で話すわけには行かんな、この廊下真っ直ぐ行けばリビングがあるからソファーにでも座っててくれ。茶と菓子を出すよ」
「あ、いえ、お気遣いなく」
「ははっ、いいんだよ。お前らは戦ってくれたんだ。些細だが労わせてくれ」
そう言われ、頑なに拒否するわけにもいかないのでそれを了解し俺達はリビングの方へと通さた。
現彼女はそのままキッチンの方へと消えていった。




