小鳥の下着購入
一度俺らは自分たちの家に帰り、着替えてから小鳥の買い物に向かった。
俺はストーカーからの護衛を任されているだけだ。
護衛……と言えば大袈裟のような気がする。
他人から見ればただ2人で買い物に来ているだけ、で済まされるような感じだ。
同じくあそこの角でじっとこちらを見ている奴ももしかしたらもしかすると他人から見ればストーカーなんだろうな。
お前、そこで何をやっているんだ?大宮……。
大宮と言うのは先程学校で女神奪還する聖戦?に参加していた男子の一人である。通報してやろうかな。
等と考えてみると、
「あー!これいいー!これ買うっ!」
小鳥はブラジャーの紐を両手で摘み、笑顔で俺に見せてきた。
殺気を感じる。大宮の方角から殺気を感じる。
チラリとそちらの方を向くと……。
なぜだ……。渡辺よ、なぜお前もそこに居るのだ。
どうやら渡辺もストーカー活動していたようです。
渡辺は、あいつだ。ちn……魂を切り捨てるな!だの常に上を向くべきだの言っていたやつだ。
どうやら今感じる殺気は渡辺が発しているようだ。
全く……。
「うん…可愛いと思うけど、念のため試着してみたらどうだ?」
どうにか殺気に耐えながら返答する。
「うーん、サイズ的にはぴったりなんだけどな」
「でもさ、買っていざ着てみたら着心地が悪い、てのあるじゃん?」
殺気が強くなっている。何故だ!渡辺の殺気がこれだけで強まったというのか…!
「あー!あるある!それじゃ試着するからさ、正樹はここで待ってて!」
と、手首を掴まれ連れてこられたのは試着室の前。
試着室前で待てと申すのか。
俺たちの移動に伴って、大宮、渡辺も移動する。
気のせいかな?人影が3つ見えたような気がする。気のせいだろう。
気のせいであってくれ。
「んっ……………………………んっ…………………」
試着室からは小鳥が着替える声が漏れ出てきている。
「よしできた!」
どうやら、試着終わったみたいだ。
「着心地とかどう」
試着の感想を聞こうとした瞬間。
「見てよっ!」
の声と共にカーテンで隠れた個室からニュルりと手が伸びてきて、俺の首あたりの服を掴んで引っ張ってきた。
「おいっ!ちょっ!まっ!」
勿論、俺の顔はカーテンの奥、通常は見ることの許されないない神聖な地に連れてこられた。
「おいっ!しっかりしろ!原田ァあ!」
大宮の声が聞こえる。
原田……と聞こえたが、あの三つの人影は数え間違えではなかったようだ。できれば間違えであって欲しかった……。
「どう?」
自信満々な小鳥の声が聞こえる、体制的に直で小鳥の胸は見えないのだが、大きな鏡により、彼女の全身が見える状態だ。彼女はワンピース姿で買い物に来ていたが、それを脱いでいるため、下は可愛らしいインナーパンツを履いていることが分かった。
一応顔を見ていると……、これは幼馴染みだからわかる。自信満々という表情だ。
そしてブラジャーの着けた胸を見てみる。
最後に見たのは何時だっただろうか、中3か高1の頃だった気がする。小鳥の部屋に行ったとき、着替えるといって俺の前で着替えだしたんだったけな。(その時は慌てて止めたが)その時も大きいとは思ったが、今見ているのはそれを超えた大きさだった。
今の彼女のような、自信満々という言葉が似合いそうな胸だ。元からだらんと垂れているようには見えず、それが更にブラジャーで囲まれ、確かなものとなっている。彼女の息遣いに合わせて胸も小刻みに揺れ、見るだけでハリと柔らかさを兼ね備えているようなものだった。ブラジャーは白を基調としたもので胸の間に小さなリボンがついていてそれが可愛さを引き立てている。
俺は思わず呟いた。
「…すごい」
俺の感嘆を快く受け入れた彼女はさらに上機嫌になっていく。
「でしょでしょ!じゃあ!外すからまた待っててね!」
「…了解」
俺は顔を赤らめながら神域から退出した。
ストーカー三人組の方を見てみると倒れた原田を渡辺と大宮が介抱している。素通りしていく一般客はチラ見しながら通り過ぎていた。
「んふー!いい買い物したー!」
「あっ、そうだ」
俺は上機嫌な小鳥を連れて倒れた原田の方に向かっていった。
すると、誰かが呼んだろだろう、係員が駆けつけており手当を行っていた。
「は、原田くん!?」
小鳥の声で近くにいることが解ったのだろう。
原田が震えた手を小鳥の方に伸ばす。
「め………が………………み…」
その掠れ声を最後に再び原田が力尽きた。
「お客様っ!?お客様!」
係員が慌てて肩を揺らす。
「あー、大丈夫ですよ…。そいつよくこうなりますから」
「で、でも……念のため病院に連れていかれた方が…」
連れていくなら……精神科とかがいいのかな……いや、でも中二病だよな…これ。
中二病は不治の病とも聞いたことがあるし…もう手遅れだな。
「いやぁー、まぁー、いろんな意味で手遅れですね………」
頭を掻きながら答える。
すると渡辺が反論を始めた。
「手遅れだと…!まだだ、まだ望みはある…!俺の家に伝わる秘伝の秘薬を使えば……!見てろよ!俺が、俺が手遅れじゃないことを証明してやる!」
秘伝の秘薬って…秘薬でよくね?と思ったが、まぁいいや。
多分………こいつも手遅れ…だろうな。
「ほー、じゃあ証明してもらおうか。コイツの中二病を消して手遅れから奪還するのもをよォ」
「中二病!?何を言うか!原田は…原田は健全なら日本男児だあっ!」
…やばい、渡辺が熱くなってる。観衆が集まっている。
「お客様…わかりました。このお方はあなた方に任せます。」
あ、逃げた。
そう言うと係員はその場から逃げるように立ち去っていった。
「…じゃあ渡辺、後は任せたぞ」
ポン、と渡辺の肩を叩いて俺達もその場をあとにした。
渡辺は大声で原田を起こそうとしているが、なんだろう…視線を感じる。
ちらっと視線を感じる方向…例の三人がいる方向を見てみると、大宮が俺を見ていた。
目が合った瞬間目を逸らされたが、なんだろう、恨みや怒りというそういう感じの目じゃなかった気がする。
なんか、こう…憧れるというか、敬うというか、愛情を送っているというか………いや、流石にそれはないだろうな。俺みたいなやつに。
愛情を送っていたら大宮は同性愛者じゃねぇーか。
前を向くと、再び視線を感じる。
同じ方向から…大宮なんだろうな。
意識しない、意識しない。
視線を感じなくなるまで俺はそう思い続けていた。
因みに、大声をあげていた渡辺とその一行はあまりのうるささに警備員につまみ出されたという。
そして俺たちはその後何事もなく、たわいもない話をしながら家に帰りついた。
ぼちぼちと書いていきます
次話には……次話にはロr((殴