姫と騎士
やっと人を、大切な人を守れる力を持てたと感じた。
これなら守られるだけじゃなく守っていけると思えた。
だが、力を手に入れたからといって守れるわけなんかじゃない。
現実はそんなに甘くはない、残酷だ。
いけるとは思ったけど、やはり私は私だ。
何も無いところで失敗をしてしまいこのざま、力を手に入れても私の根本的な部分は変わらなかった。
何かと気が抜けている、天然、自由奔放、危なっかしい……。
真樹によく言われてたが、本当にそうだったよ。
ああ、一瞬な筈なのに私が衝突するであろう木に突撃するまでの時間が長く感じる。
神様が私に悔いを感じさせるための悪戯だろうか。
ごめん真樹、守れなかった。今までの恩、返せなかったよ。
「小鳥ー!」
真樹の声が聞こえる。ごめんね、今までありがとう。
大す…。
突如、竜に飛ばされ感じていた気圧の感覚が消えた。
それに加え私を柔らかく温かみのある何かが包み込んでくれている感覚が伝わる。
ぶつかった衝撃を感じる前に死んだのだろうか、いつの間にか閉じていた眼を開くと目の前には真樹がいた。
木にぶつかりそうだった私を助けてくれたのだ。
しかし、どのようにして私を助けたのだろうか、通常の速度では間に合わないはず。
「え、あれ……私……え……?」
真樹は可愛らしくなった顔つきでいつもと変わらない笑顔を私に見せてきた。
何があっても変わらない真樹の笑顔、きっと私を助けた安堵から来るものだろう。
「ごめんな……俺がしっかりしてなかったからお前にこんな危険な真似をさせてしまって」
可愛らしい顔で囁くように私に語り掛けてくる。
「もー、たまには私にも守らせてよね。守られるだけじゃ行かないし…守るって約束したし……へへ」
「なぁに、姫様を守るのが俺の役目さ。大人しく守られときな、小さい頃からの約束だろ」
そう言いながら真樹は抱えてた私を下ろした。
まず地面に足裏の前にお尻が接触したのがきっかけでふと思い返してみれば真樹は私を抱っこしていた、お姫様抱っこを…。
思い出しただけで私は頭がいっぱいになり、赤面する。
「ででで、でもさ姫様より可愛らしい騎士って何なのさ…」
呂律が回らない…、なんとか言葉になったものは言えたものの確実に可笑しな口調だっただろう。
てか、真樹に可愛いは現状タブーな気がする。
「おいおい何言ってんのさ、俺よりお前の方が可愛いだろ。だいたい男性と女性で可愛さ比べしても殆どは女性が可愛いはずだけどな」
タブーを言ってしまっただろうという言動に怒るような返しはせず、私にとってはダメージの大きい返しが来た、嬉しい意味でのダメージ。
騎士さんや、守ると言いながら私のハート完全に攻め落としてますよ。
そのことで頭がいっぱいで「だいたい~」のあとは何を言っているのか把握出来なかった。
「おっといけねぇ、仮面の旦那!小鳥結構なダメージを受けてるっぽい!何かしらの手当出来ないのか!」
真樹は頭が混乱している私を竜によるダメージと勘違いしたのだろうか、仮面の男に救助を頼み込んでいる。
「ええ、出来ますけど…。その前に竜がこちらに火炎を吐こうとしてます!真咲ちゃんはなんとかして火炎を防いでください、その間に私が手当します!貴女の力を開花させる時です!真の力を咲かせる……だから真咲なんでしょ!」
竜の状態を確認してみると確かに大きく息を吸い込んでいた。
それもめいいっぱい、そういえば仮面の男はよくぞまぁあれを剣1本で防いでいたなぁと、回らない頭の端でそんなことを考えていた。
「え、あ、は!?いや、俺の名前そっちじゃねぇし!…と、取り敢えず何とかするから小鳥のことは頼んだぞ!あ、あとそれと俺と小鳥の関係は姉妹だとか兄弟だとかそんな関係じゃなくてただの親友だからな!」
……私が戦っている最中彼らはどんな会話をしていたのだろうか、後で仮面の男に聞いてやろう…。
あれ、こんな展開私の脳内メモ帳には存在しなかったはず……
(-ω-;)