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俺に身長をくれっ!  作者: 968
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守る

昨日まで運動が全くダメと言っていいほどの運動音痴だった小鳥が、昨日までの俺より数段速いダッシュでまだこちらに気づいていない竜に近づく。

「せあぁっ!」

小さく、強く唸り龍の腹部目掛けて跳躍し、見事なフォームでストレートを腹部に深く殴り込む。

その攻撃で小鳥に気づいたのだろう、上空の機械を無視して下に顔を向けた。

それに気づいた小鳥はその場からバックステップで大きく後方に下がる。

いやはや、あれはもう常人の域を超えてもいいような動きですな。

昨日までは胸が常人の域を超えたようなものだったが、それがこちらに転化したのだろうか。

「真咲ちゃんはいいんですか?」

「えっ?」

男の希望であぐらの上に座らされて、そこで小鳥の胸と動きを考えていたら、先程から何故か俺の腹部を撫でている男が俺に問いかけてきた。だから俺は真樹だっての。

「彼女は貴方を守ると竜に立ち向かって行きました。見るからにして至って普通の女子高生、毎日友達とたわいない話に花を咲かせながら日常を送っていた普通の女子高生でしょう。そうだったであろう彼女がどうです?朝起きたら自分から何かが欠落し、外に出てみれば見たことのない出来事に遭遇。そして今は掛け替えのない妹を守る為、初めて見る化物(りゅう)とああやって戦っています。」

小鳥が竜の尻尾の振り回し攻撃を(かわ)し、再び攻撃の為に敵の懐に踏み込むという場面がちょうど目に入った。

確かに昨日まではいつものようにたわいもない話を広げ、守る側というより守られる側であったであろう小鳥がああやって誰かを守る為に戦ってるんだ。まさか小鳥の護衛をしてたのにいつの間にかその立場が逆転してるなんてな。

何やってたんだろうな…俺は。

「見るだけで竦んでしまうような敵に立ち向かうにはそれなりの勇気と決意が必要です。そして彼女は竜に立ち向かってまで守りたいというほどの決意を持っています。貴女(あなた)も彼女を守ると言いました。ですが貴女の『守る』はこの現状を見る限り何かが起きたら向かう、何かが起こらなければただこの場で戦況を眺めているだけの『守る』。それだけの決意だったのですか?貴女は守らず、ただ何かが起きた時、助けになればいい、ただそれだけですか?」

違う、違うんだ。俺も……俺だって…。

俺を責め込むように言葉を重ねていく男。

「戦わないんですか?そして彼女を守らないんですか?」

「違うっ!」

俺は思わず言葉を発してしまい、そのまま流れ出る滝のように言葉が続く。

「俺だって!俺だって小鳥を守りたい!小鳥だって内心あんなのと戦って怖いはずだ!助けを求めているはずだ!あの場に立って小鳥の代わりに、小鳥を守るために戦いたい!例えこの身がズタズタになろうとも俺は小鳥を絶対に守るっ!そして周囲の人を焼いたあの竜をぶっ潰す!でも!………でも、俺には力がない。彼女を守り竜を倒す程の力はない。」

それが、俺が戦えない理由。守れない理由。

小鳥のようなあの竜と戦うための力がない、武器がない。

俺はただここで戦況を眺めることしかできない。

力がない…俺には。

「なぁに言ってるんですか」

自分を責めてた俺に男はそれを貶すような言葉を投げかけた。

「さっき言ったでしょう。身体的、精神的エトセトラで異常が発生した人には必ずアイツらと戦える何かしらの力が代わりとして与えられるって。だから必ず貴女も持っているはずですよ、例え貴女自身が気づいてなくても、貴女の心の中にきっと必ず」

「俺の……心の中に」

彼女はそう言いつつ俺の腹の上に乗せていた手を胸部に移動させ軽く叩いた。

「今出ないかなんて関係ない、その場でなんとかすりゃなんとかなりますよ」

そして男は俺の脇を抱えて立たせ、着ていたマントの懐から何かしらの腕輪を取り出した。

「これを…つけていってください」

そうして渡された腕輪は明らかに至って普通の金属製の腕輪。

「あの、これは…?」

「まぁ、戦闘中ですし手短に言いますと、空想で現実の事象を上書きする腕輪ですね。装着者の強い願いを具現化させる装置です。武器や己を硬くしたり、移動速度や腕力の強化とかそういうものを一時的に上書きする腕輪です。因みに私の作成品です。なお、安全のため敵に害を発するような願いは具現化しません。口からビームを出して攻撃だとか、相手の心臓を止めるとか。あ、あと通信機も渡しとくので、持っといてください」

……手短に…なのか?まぁええか。

「ありがとう。でもなんで俺だけ?」

「いやぁ、幼女は守らないとってのもあるんですけど、(私好みじゃないからままいいかとも思ってましたが)あの子には渡す機会がそびれたんで…」

あらそう。なんか、心の声みたいなのも聞こえてるけど?

『私好みじゃないからままいいかとも思ってましたが』

とかそんな感じで…

「わ、わかった。行ってk…………っ!」

腕輪と通信機を身につけ行こうと竜を向いたその瞬間、小鳥が何かにつまづき、転けそうになったところを竜の尻尾の振り回しが突撃しこちら側に飛ばされてきた。

俺は思わず、彼女を守るため、彼女が飛ばされる方向に全力で走っていた。

腕輪よ、もっと、もっと速く。そして、しっかりと受け止めれるような力をくれ。

それに呼応したのか、腕輪が輝いた瞬間俺の走るスピードが格段に上昇した。

最近、感想の返信方法を知った。

今返しても今更感があってなんだか申し訳ないですし……

うぅーむ…

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