男
いやぁ、最近忙しくて(言い訳)
「セヤァッ!」
男はマントの中から長身の剣を取り出してその炎を断ち切った。
断ち切られた炎は俺らに届くことなくその場で燃え尽き、炎を切った男は「大丈夫ですか?」と言いながらこちらを向いてきた。
どのような顔だろうか、と思ったらその男は仮面を被ってその素顔を隠していた。
この男はどこまで隠したがっているのだろうか。肌が見える箇所が一つも見当たらない。
「全く……こんな可愛らしい幼女にまで手を出すとは、彼奴も野蛮だな……」
そう言いながら男は俺の頭を撫でた。
仮面の奥から感じる目線は危ない何かを感じる。
なるほど、コイツ俺を女だと思っているのか。
あと確実にロリコンだ。
「ちょっと、オッサン!私たちたちを助けてもらったのはありがたいんですけど、そんな目で真樹を撫でないで貰えます!?」
と言いながら小鳥は男の手首を掴んだ。
オッサン……か。昔の小鳥なら『おじちゃん』とか『おじさん』だったのに……変わったな。
そう思いつつ、頭部に乗せてある男のてからはミシミシと危なげな音がある聞こえていたのだが、果たして大丈夫なのだろうか。
リンゴを潰した女なんだが…。
「なるほど、真咲ちゃんと言う名ですか。可愛らしさに似合った可愛らしい名前ですね」
そう、痛みを感じることの無い様な軽い声を出しながら小鳥の手をもう片方の手で取り外した。
「真樹だっ!」
今日で何度目だろうか、俺は反論した。
「いやぁ、外見も可愛らしいと思えば声も可愛らしい……まさしく私が探していた幼女だ!」
「俺は男だ!」
加えて言い忘れていたことを反論した。
「男……可哀想に。非現実的なことを目の当たりにして気が動転してるのですね……。わかりました、私があの竜を倒して幼女を正気に戻してあげましょう!」
なんか、やる気を出させてしまった気がする…。
あと、俺は正気です。
「あと、大丈夫ですよ。竜の炎を喰らった人たちは死んでなんかいません。ただ、捕食されただけです」
捕食って…結局食われているのではないか?
そう、疑問に思っていたら横から小鳥が言葉を投げかけた。
「なんでアンタがそんなこと知ってるの、アンタとあの竜は何かしらの関係があるわけ?それと、なんであの竜こっちのことほったらかして空を見ているのさ」
え、っと思い竜を見てみると確かにこちらの事を放っておいてまるで空を見て何かを目線で追っているかのように顔を小刻みに動かしていた。
「あー、えっとーー、まぁ、あの竜は私のちょっとしたミスで出てしまったモノでして………今ソイツの処理をしている訳でして……。あとあの竜が上を向いている理由は私が開発したオートアタッカーという小規模の機械を複数飛ばしてあの竜を攻撃して敵意をそちらに向けているんですよ。あの竜の目線の先には多分それらがそんでると思います。あ、あと身の回りの人で何かしら身体的、精神的、エトセトラで何かしらの異常な異変が起きている方がいれば私に言ってください。」
と言い終えたあとマントの中から紙切れを1枚取り出して俺に渡してきた。
受け取ってその紙を見ると電話番号が書かれていた。
竜の目線の先に居るであろう機械を眺めながら、身体的、精神的異常なやつ居たっけなと頭の隅で考える。
……………原田かな?精神的異常…
昨日散っていった原田の顔を思い浮かべていると再び小鳥が横から、
「肉体的異常って、私たちのことじゃない?」
そう言った。確かに言われてみれば今朝肉体的異常が発生したな。
「え、本当ですか!」
そう言いながら再び男はこちらを凝視する。今度は危ない目線ではない。
「ええ、私は胸が無くなった、筋力が異常に強くなった。真樹は身長がかなり縮んだ、顔が可愛らしくなったってところかな」
小鳥は性格が攻撃的になったっぽいと言ってみようとしたが、言ったら自分の身が潰される気がしたので口を紡ぐ。
「良かった!じゃあ、あなた達があの竜を倒してください!!」
「「はぁっ?」」
俺と小鳥の声が重なった。
「え、だってそういう身体的異常が起きた場合その代わりに特殊的な能力に目覚めるはずなんですが………確認しませんでしたか?」
と、まるで当たり前のことを言っているかのように「確認しませんでしたか?」と言ったが……
「体にこんな異常が出て『あ、俺特殊能力に目覚めたわ』って思う輩がどこにいるんだよ!!」
と俺は思いっきり突っ込んだ。
気づかないの普通。ひと欠片も思わないのが普通。まずは異変に混乱するのが普通。特殊能力に目覚めたわと即座に感じられるのは異常。と、思っていたのだが…。
「あ、特殊能力ってのはこれ?」
と、いつの間にか小鳥は両手に機械質的な手袋のようなモノを身につけていた。
「ちょっ!お前それどこから取り出した!?」
「え…どうって……こうやって…」
と言いながら小鳥の手からそれがスウッ物質が非物質になるように、見えるお化けが見えなくなるように消えるように消えた。
そして再び何も無いところからいきなり現れるようにして拳が具現化された。
「そう!それですよ!ペチャパイさん!」
と言った瞬間手袋をつけた拳で思いっきり男を殴ろうとしたが、男は必死の思いでそれをよける。
「なんだろう……今ものすごくイラッとした。」
冷酷な表情で小鳥は呟いた。
「ま、まぁ……貴方達の出せるそれらがあれらに効果的な武器となります。理由は後で言います」
「でも、アンタが竜を倒すんでしょう?」
と、手袋をつけた手で竜を指差した。
「いや、まぁ、倒せないこともないんですが、あの竜は物質的状態と精神的状態の狭間に存在する状態です。そして私の持っている武器は純物質的存在、例えダメージを与えても単純に考えて通常の半分しかダメージを与えられない状態です」
先程取り出した剣を見せながらそう答え、さらに続ける。
「それに対して貴方のそれは竜と同じく物質的状態と精神的状態の狭間に存在するモノです、そのため奴らには私よりも十分なダメージを与えることが可能です」
と、丁寧に説明をしてくれた。再度竜を見てみるが未だに空を眺めている。
「じゃあ、私のコレを貴方に与えれは貴方が戦得るんじゃないの?」
と、3度の質問。
「可能ならばそうしたいのですが、狭間状態の武器に触れ、持つことの出来るのは同じ狭間状態の武器を持つ者に限られます」
「あら…ま、じゃあ仕方ない。真樹を守るって言っちゃったし、戦うしかないかな」
と、小鳥は拳を握りしめ竜を睨んだ。
「頑張ってください!幼女は何があっても私が守ります!」
「分かった。アンタも討伐対象に加えるね」
満面の笑みで男を見つめ小鳥はそう言った。
その顔は笑みなどではなく殺意に塗り固められているように感じる。
「………………真咲ちゃん、逃げましょう。ここは危険です」
「真樹だっての。あとあの小鳥が戦うんだ、おいそれと逃げるわけにはいかねぇよ。俺も小鳥を守らなくちゃ、何かあったら小鳥の親に合わせる顔がない。」
「分かりました。では、ペチャ………小鳥さん頑張ってください」
男は一瞬にして強まった殺意を感じ取ったのだろう、小鳥の呼称を咄嗟に変えて応援した。
「任せなさい、あんな爬虫類1発よ」
そう言葉を残して竜の元へと颯爽と走っていった。
何であれ、感想を頂くと小説を書くやる気が満ち溢れますね。
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