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俺に身長をくれっ!  作者: 968
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身体測定後

「はい次ー」

身体測定……楽しみと不安が募り己の身体を知る学校の小さなイベントのようなものだ。誰だってここでいくら身長が伸びたのだろうか……座高は?体重は?持久力は?等と思うだろう。俺だってそうだ。その中で一番の楽しみが“身長”である。

一体全体去年と比べてどれくらい身長が伸びたのだろうか。でもまぁ去年の身長が確か180……だったけな?高1にしては高すぎるほうなんじゃないのか!?等と昨年言われたような気がするが全国を回れば同世代でまだ大きいやつはいると思う。

でもさすがにこんなに身長は要らないのだが……身長が伸び止む兆しがなかなか来ないのでもう伸びることを楽しみにしている。

絶対に200以下、少なくとも190以下、出来れば今の状態のままがベスト!欲を言えば縮んでいて欲しい。なんか、楽しみって思いながら考えていることが矛盾しているような……。

そんなことを思いながら俺は身長計に乗る。

「えぇーっと、187,2。すげぇなお前、その身長で成長期を迎えた感じか?」

出来ればその成長期を直ちに終わらせて欲しい。

いらねぇよ、そんなに身長。

「そうなんですかね」

俺は適当に言葉を返した。

体重、座高等その場で測れるものを測った後、教室に戻るとクラスの一人が話しかけてきた。

「なぁ?正樹、どれくらい?」

「ん?187,2だとよ」

俺はVサインをしながら答え。

「ムカつくなてめぇっ!寄越せよその身長!」

「あげれたらねー」

彼は笑いながら言葉を返し俺もお決まりの返事を返す。

うん、マジであげれたらあげたいよ4~50位……50は言い過ぎかな。

そのあと席に座った後も先に終わった男女達に身長を聞かれ、女子には「すごーい!」や「かっこいー!」などと聞こえてくるが幻聴だろう。

勿論男子には「その身長よこせ!」「くそっ!この世界にトレード機能があれば正樹のいろんなものと交換出来るのによ!」などと聞こえてくる。因みに俺のいろんなものと交換したらお前はゴミになるぞ。頭とか、頭とか、顔とか、顔とか、顔とか。

「ねね?正樹くん?」

ひとりの女子が俺に話しかけてきた。

「正樹くん……彼女とかいるの?」

「ん?彼女?………………いや、俺はまだ彼女はできたことないけど」

こんな俺を彼氏にしたいとかいう女子がまずいるわけが無い。

「えっ!うそっ!正樹くん彼女いないの!?そんなにかっこいいのに!?」

なんか幻聴が聞こえた気がする。

すると彼女いないと聞いた男子が俺の肩を掴んで叫んだ。

「ウソだろっ!てめぇっ!我がクラスの女神!学年の聖女と呼ばれるあの子と毎日いちゃいちゃしているじゃねぇかよ!アイツが彼女じゃねぇのか?」

俺は肩に乗った手をどかしながら答える。

「え、あ、いや、あいつはただの腐れ縁というか幼馴染みというか……」

「聞いたかっ!野郎どもっ!我らが女神はまだ男を持っておらぬっ!今こそ我こそはと思う輩は告白するべきであろうっ!」

俺の言葉を最後まで聞かず先程まで俺の肩に手を乗せてた男子が拳を突き上げて男どもに向かって叫んだ。

その間女子はあちゃーという感じで頭を抱えていた。

叫んだ男子に呼応して拳を突き上げた輩はきっと女神と呼ばれているアイツが好きなんだろうな。

モロにバレている。


「あ、正樹ー!」

…と、やっていると女神(アイツ)の声が聞こえてきた。

周囲の男からは彼女を愛で、俺を憎悪の目で睨み始める。

「ん?どうしたんだ小鳥」

彼女の名は(あずま) 小鳥

特徴としたら、胸が大きいのとほんわかしてるって言う感じだろうか。近くにいるだけで癒されるような感じ?

そんでもって、いい忘れていたが俺の名前は結城 正樹。

特徴は………背が大きいことぐらいだろうか。

「どうだったの?身体検査」

「どうだった…って、ふつーに背が伸びてた」

俺は自分の頭を軽く叩きながら答えた。

「へー、程々にしといてよね。私が頭ナデナデ出来なくなるし」

ナデナデする日なんて来るのやら。

なんだろう…憎悪の視線が殺気に変わった気がした。

「しなくていいって、もうそんな歳じゃねえって」

代わりに頭をナデナデする。

するとさらに周囲の殺気が増した。

殺気に殺されそう。

「私だってもうそんな歳じゃないよ!」

むー、と頬を膨らませ彼女は反論した。

「ははっ、ごめんごめん。そいや、お前はどうだったんだ?」

俺は彼女の頭に手を置いたまま尋ねる。

「え?んー、胸がまた大きくなったんだよね。大きくなっても肩が凝るだけなんだけど」

(いいえ、私達にとっての目の保養です。たゆんたゆんしてるのが良いんです)

気のせいかな。周囲からそんな声が聞こえた。

「まぁ、その時は俺が肩揉んでやるからさ」

「大丈夫!家にマッサージチェアあるから」

彼女はウインクをしてグッドポーズをした。

「ぐはあっ!」

周囲の男子が尽く倒れていく。

「しっかりしろ!おいっ!」

ぎりぎり倒れなかった男子が倒れた生徒を抱えて叫ぶ。

「ぐっ………す、すまねぇ、俺は、もう………ここまでの命、だったみてぇだ。」

「んなことねぇよ!立ってくれよ!なぁ!」

抱える生徒は涙目で訴えている。

なんなんだこの情景は。

「最期に、おれの………頼み聞いてくれるか………西本」

倒れた生徒は震える手で抱えている生徒の胸倉を掴んだ。

「最期だなんて言うなよぉ…」

あふれる涙の量が増える

「俺の分も……見てくれ。この下界に降り立った女神を……さ」

その言葉を最後に胸倉を掴んでいた手が落ちて、彼はガクリと顔が項垂れた。

「おい…………おい、おい!起きろ!起きてくれ!……頼む………起きてくれよ!原田!……なぁ…………起きてくれよ……!」

動かない原田の胸に頭を当てて泣き叫ぶ西本。

しかし何度叫んでも動かない原田。

なんだろう……目から水が出そう。

「正樹、原田君と西本君は何やっているの?」

「無視してていいよ」

小鳥の言葉に正気に戻り、流れそうだった涙は流れずに終わった。

「そういえば、なんの話してたんだっけ」

「ん?マッサージチェアの話じゃなかったっけ」

「あー、それそれ!マッサージチェアがあるから大丈夫だよ!」

再度グッドポーズをしようとした彼女の手を俺は止めた。

「ん?」

「あ、いや、なんでもない。………でもさ、そんなに胸が大きかったらいつか牛になっちゃうんじゃないか?」

ガタッ

死んだはずの原田が勢い良く立ち上がった。

そのせいか、机か椅子に体のどこかをぶつけていたが……。

「原田!?よかった………よかったよ、生き返ってくれて」

歓喜の声をあげる西本。

「……俺、まだ、死ねねぇよ」

「そうだよ!お前はまだ死ぬべき人間なんかじゃない!一緒に愛でよう!女神を!」

泣き顔で原田に抱きつく西本。

「キモっ」っと女子の集団の誰かが言ったような気がしたが気のせいだろう。そんなことお構いなしに彼らは続ける。

「ああ、でもさ、その前に倒すべき相手が………天に召すはずだった俺にさ神からのお告げがあったんだよ。死ぬ前にそいつを倒せ…ってさ」

原田は淡々と喋っていく。

「まさか……そいつは…………!」

「ああ、アイツだよ……!」

原田は俺を指差しながら言った。

「結城………正樹だ!」

憤怒の篭った声で叫んだ。

「皆の衆!立て!武器を持て!闘士を燃やせ!闘おうぞ!これが俺達の聖戦だ!」

その言葉に呼応するかのように、死んだ男子は立ち上がり、仲間の死により挫けた男子は闘志を燃やす。

もちろん武器は…剣に見立てた定規だ。盾に見立てるならあの数学の先生がたまに使っている大きな三角定規だが、数が少ないため諦めたのだろうか。

次々と男子は武器庫…もとい、筆箱から武器を取り出して構えていく。

「えっ、ちょっ、まっ」

慌てふためく俺。

何が起こったのかさっぱりな小鳥。

すると目の前を何かしらの影が遮った。

「すまぬ……遅くなった」

そう言ったのは先程まで同じ教室で男子たちを白い目で見ていた女子生徒達だった。

因みにさきほど喋ったのは先頭に立っているであろう。このクラスの組長、千籐(せんどう)燐華(りんか)だ。

「遅くなったって…さっきそむぐっ」

真実を言おうとした小鳥の口を塞ぐ。

「どうして……俺たちを」

軽く乗って返答する。

「ふっ、決まっておろう。お前たちを、華を護るためだ。それ以外になんの意味がある」

なんか、かっこいい。

「むぐぐぐぐ!」

口を抑えられていた小鳥が叫んでいた。

「あ、わりぃ」

慌てて手をのける。

「護るため……か、おい!組長!俺たちは女神を救いに来た!そこを退いてもらおうか!」

女子生徒に口論する原田。

「ふっ、先の話聞いておらなかったのか?言ったであろう?彼らを護るとな」

あれ?、組長こんなキャラだっけな?

「ケッ!口で言っても聞かねぇなら力ずくしかねぇが……最後にもう一度チャンスをやろう。痛い思いをしたくなければ女神をこちらに渡せ!」

「ねぇ、正樹。女神ってだれなの?」

「さ、さぁー?誰なんだろうなー?」

小鳥の質問の答えを誤魔化す。

「痛い思い……か、その言葉そっくりそのまま返そう。痛い思いをしたくなければ今すぐ降伏しろ。さもなくば……」

「さもなくば……?」

「……こほん、後のお楽しみだ」

あ、これはあれだ。言ったはいいがその続きの言葉が思いつかなかったから有耶無耶にしようとしているやつだ。

「原田…!急ぐぞ!急がないと……女神が野獣にあんなことやこんなことされてるかもしれぬ!」

「あんなことやこんなこと……?ぐっ、許せねぇ!降伏しなかったら何をされるなど知ったこっちゃねぇ!いくぞ!」

おおっ!

と、雄叫びをあげる男子。

因みに俺は何もいらやしい事はしてません。

「ふっ、若造が。短き人生に終止符を打ってしまったことにあの世で後悔しな!みんな、行くよ!」

おおっ!

と、雄叫びをあげる女子。

すると女子の一人が俺に言ってきた。

「正樹…、君たちの平和は私たちが守る。だから、楽しみなよ」

そう言って彼女は戦場に赴いた。

かっこいい。

「ねぇ、正樹」

「ん?」

「なんの話してたっけ?」

この状態で話の続きやろうとはなかなかやるな小鳥は!

「んー?そんなに胸が大きかったら牛になるんじゃねぇか?とかじゃなかったっけ?」

「あっそうそう!…私、牛にはなりたくない」

「まぁ、そう…だよね」

「ベットで寝れなくなるもの」

「そこ!?」

太っちゃうもん、とか、おしゃれ出来なくなるー、とか、草しか食べれないなんていやー!とか言うかなと思ったが、まさかそう来るとは。

「ん?」

「いや、なんでもない」

ふと、生徒達(クラスメイト)の方を向くと、男どもは股を抑えて蹲っていた。

「ふん、弱点をさらけ出したままよくぞまぁ…あんな大口を叩けたものだな。雑魚が」

男子生徒を見下している組長。

「かっ、ハンデだよハンデ」

反論する原田。

「ほう、ではどうやってそのハンデをとるのだ?」

冷酷な目つきで質問をする組長。

「そ、それは……」

困る原田。

「取るのか?」

質問を重ねる組長。

なんだろう、今起こっている一連の流れを撮って演劇部に見せてみたい。

「だめだ!原田!これは……これは!俺たちの魂だ!挫けちゃいけねぇ………俺たちの魂は簡単に切り捨てていけないもんじゃねぇ!常に…常に上を向いているべきものだ!」

……その言葉だけを聞くとなかなかいい言葉だけど………。今この場で言ってしまっては単なる変態発言だぞ、渡辺。

しかも股を抑えながら、立ち上がっているからかっこよさが半減だ。更に痛みを堪えてか内股になっているし。

「はっ……そうだったな、渡辺!例えこれがハンデとなろうとも!最悪この聖戦に敗北しようとも、この魂だけは捨てるわけにはいけねぇ!」

原田は立ち上がりながら言う。その言葉に感化されたのか次々と立ち上がる男子生徒。

「いいか!組長!お前らは…女神を守る天使(じょしせいと)かもしれねぇ……しかし!この戦い必ず勝ってみせらァ!」

組長に向かって叫ぶ原田。

その時だった。


ガラガラ


「おーい、席に座れー。帰りのHR(ホームルーム)始めるぞー」

先生がドアを開けて教室に入ってきた。生徒たちが慌てて自分たちの席に戻る。

その戻り方が机を飛び越え、回転し、なんともアクロバティックだった。

先生はそんな移動方法に無反応だった。

「あ、じゃあ今日もいっしよに帰ろうね正樹」

「ああ」

小鳥は普通に小走りで戻っていく。

なんだろうか、席についた男子から鋭い目線を感じる。

俺も席に座ったところで先生が口を開いた。

「みんな席についたなー、じゃあ千籐頼む」

先生の言葉に組長が言う。

「起立、礼、着席」

組長の掛け声に応じて皆が動いていく。


こうして今日の学校生活が幕を下ろした。



「んーー!終わったー!」

校門を出たところで伸びをする小鳥。

「さぁって、帰ったらゲームゲーム♪」

上機嫌な俺。

「たまには勉強しなよー」

「大丈夫だって」

小鳥の心配を軽く受け流す。

「小鳥はどうするんだ?」

「え?私?そうだね……ブラがキツくなってきたし新しいの買おうかな」

小鳥は胸を触りながら言う。

「あ、そうだ、正樹!正樹も来てくれない?」

「ん?あー………………えっ!?」

自然な流れでつい「いいよ」って言ってしまいそうだったがなんとか思考が踏み止まった。

「いやいやいやいや!!俺がいたってブラのことなんてわからないよ!?」

「いいよいいよ、正樹は着けたのが似合ってくれるかどうか見てくれるだけで」

彼女は笑顔で恐ろしいことを口にした。

あれ、おかしいな。周囲には特に誰もいないはずが、とてつもない殺気が。

「だだだだ、ダメだろ!!親…親に見てもらえ!」

冷や汗を流しながら反論する。

「えー、親に見せるぐらいなら自分で判断するよ」

「お、おう。そうしろそうしろ。それが一番ベストだよ」

冷や汗を流しながら肯定をする。

「でも正樹に見てもらってほうがー」

「だからダメだって!男が女の胸を見るのはNGなの!わかる!?」

慌てて、小鳥を説得する。

「え?でも昔一緒に風呂入ってたり…」

「だーー!そ、それは昔のことだろ!今はまた別だ!」

気のせいかな、周囲に誰もいないと思うのだが、あの電柱からとてつもない殺気を感じる。

「…………じゃあ、さ。護衛お願い」

「護衛?」

「うん。ほら、あの電柱の後ろにいるような感じの人のようなのからよく見られている気がするの」

あー、なるほど。ストーカーですね。


と、言う事で俺は護衛をすることになった。

次話は少し短くなると思います

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