共感しない物語1
土が爪にめり込み、痛いほどに力を入れていた。
どこだかわからないが、潮の香りを含んだ風が身体を叩きつける。
強い酒を飲んだように、いや、酒はやらないのだが、酔った状態というのは恐らくこういうものなのだろうか、頭もはっきりせず、まっすぐ歩いているのか、斜めに歩いているのか、感覚も鈍っているように感じる。
果たして私の腕は自由が利かない。
何か、そう、縄。(恐らく縄。)
そしてそれは新しいものではなく、使い古してはいないが多少ほつれた繊維が歩くたびにこすれ、先ほどから手首に痛みを感じる。
幸い、全身に叩きつける冷気を帯びた風で痛みを多少和らげているのかもしれない。
歩みの遅れた私の首を引っ張る看守。
流罪。
あぁ、私は想像していただろうか。
過酷なこの現実に。
1ヶ月前、知人に頼まれこのツアーに参加した。
果たして私はあと3ヶ月耐えられるのだろうか。