魔法統治国家:エアスト
"おーーい!!ちょっとそこの荷物浮かせてくんねェか!!"
"みてー!!!このまえ水のまほうの使い方をおぼえたんだーー!!!"
魔法統治国家エアスト、別名水の国とも言われるこの国には、"魔法"があった。
火を操り暖をとったり、水を操り水遊びをしたり、風を操り床掃除を簡単に終わらせることだってできる。ここに生きる者は互いに秩序を保ち合い、魔法を利用して自由に暮らしていた。
それが可能なのはエアスト内のマナ空気含有量のおかげであり、それのせいでエアストには、かねてから一つの致命的な問題が発生していた。
特別な固有の魔法を扱う、"魔女"という存在が居る。
エアスト魔法管理省は昨今の魔女による国民への影響度数から、より規制を強めると見解を述べーーー
「あ、消してしまうんだ。折角観測してあげたのに。」
「えぇ、この未来は調和に必要ありませんから。」
「これが彼の望みならば、私が正して差し上げましょう。」
「ネトは特別、良い人ではありませんので。」
紅と蒼の双眸が、写真立ての中の少年を愛い眼差しで眺めた。
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"4月1日、今日のエアストの天気は雲一つない快晴です!"
"いや~4月の始まりですか~、新社会人になる方や、新しい学校生活が始まる方など、次の人生へ踏み出す特別な日ですね~"
「(次の人生....か.......)」
少年は昨日近場のコンビニで買ってきた菓子パンを食みながら、つまらない記憶の残影を飲み込む。
「きっと僕も、この学校でなら変われる...よね。」
そんな独り言をつぶやきながら椅子を立ち、玄関の方へと歩みを進めた。
ガチャッ
「行ってきます...って言っても、誰もいないか。」
エアストは周辺諸国の中でも一番に治安が良く、15歳にもなれば一人暮らしを始めるのが当たり前だ。
電気の消えた部屋を背中に、煌々とした太陽の映す、見慣れない景色の外に出る。
朝のエアスト第三区は、未だ少し肌寒さを覚えた。
「えーっと、確かこの道を曲がって...」
「なんかこの辺りの道、やけに入り組んでて分かりにくいんだよなー、ほら、そんな事言ってたら行き止まりだし...はぁ........」
自分の方向音痴に嫌気を感じているところ、携帯の時刻アラームが鳴った。
"ピピピッ現在時刻午前7時半デス"
「えっ!?やばっ!?!?入学式まであと30分しかない!!!!」
「急がなきゃっ!!!」
タッタッタッタッタッ
「ーーーっはぁ...はぁ"...もっと休みの間に運動しとくべきだった....」
ただでさえ毎食コンビニ飯な上に万年運動不足のため、夜空少年の体力は常にゼロに等しかった。
疲労で重くなった体をなんとか動かし、正面玄関に居る先生らしき人に始業式が行われる会場を尋ねる。
「この度は政府立エアスト第一基本学校へのご入学、おめでとうございます。始業式の会場はあちらの建物となっております。」
「わかりました!ありがとうございます!!!」
少年は先生に感謝を告げ、会場へと足を進めた。
「(にしても、学校の中って言うのにすごい広いなぁ...)」
政府立エアスト第一基本学校、通称エア校は、一般的な高校授業に加え、魔法学や諸外国研修、魔導研究など、より専門的な事を学ぶ一種の学園都市のようなものであり、内部には研究室や図書館、ちょっとした娯楽施設から飲食店まで、充実した施設が設けられている。
入学選考はかなりの難易度と倍率を誇り、エアストの受験生にとっては、高嶺の花のような存在なのだ。
「(えっ!?学校の中にマイクがある!?嘘でしょ!?!?)」
「(ようやく僕も3食コンビニ飯生活から抜け出せるかも...!)」
逆にもっと不健康になりそうということには目を瞑っておこう。
簡単に校内施設を見て回っていたところ、先生に教えてもらった建物まで辿り着いた。
モダンな様相だったため外装だけでは分からなかったが、どうやら体育館らしい。
「えっと僕の席は...あそこかな?」
比較的綺麗目なパイプ椅子に腰をかける。
朝から不本意な持久走を強制されたため、安定した体勢になると、つい瞼が下へ下へとずり落ちる。
「(あーやば...正直このまま寝れるかも.......)」
そんな怠惰な少年を殴り飛ばすように、入学式が開式となった。
「これより、エアスト第一基本学校入学式を開催いたします。」
「一同ご起立願います。」
ガララララララ
「礼」
生徒が一斉に頭を下げる。
こんなテンプレの儀式のようなものに意味があるのかは分からないが、少年も深々とお辞儀をする。
「着席」
「まずは新入生皆様方のご入学に感謝の意を示すと共に、心からお慶び申し上げます。」
「私は本校の学校長であると同時に、魔女観測協会会長である、環視来と申します。」
「(魔女観測協会...?)」
魔女については書物やニュースなどで見たことがあるが、そんな協会があるとは知らなかった。
「さて、皆様方においては、魔法の研究や、より専門的な知見を広めることを目的にご入学された方が多いと伺っております。」
「もちろん"魔女"について、知りたい方もいるでしょう。」
「前提となりますが、本校において魔女とは"忌むべきモノ"、"敵対存在"として扱っております。」
突然の攻撃的な内容の話に一瞬会場内がざわついたが、そのざわめきはすぐに治まった。
「エアストは国民の方々の互いの調和、秩序の保ち合いによって成り立つことができています。」
「その調和を崩す存在こそが魔女であるならば、我々は魔女についての知識を深め共有し、その災禍を絶たなければなりません。」
「是非皆様方のご活躍を願っております。」
「(...なんだか、大分思想が強い学校長だな......)」
会場内では賛同するように首を振る者や異議を抱えるように顔をしかめる者、特に何も考えてなさそうな者など、様々な反応が見られる。
「(そもそも、魔女ってそんなに悪い人なのかな....?)」
「(実際に見たことがないから、僕には分からない問題だ........)」
「ーーーでは、これにてエアスト第一基本学校入学式を閉式致します。」
「事前に送付した資料を基に各自教室へ行き、HRを受けてください。」
新しい学校での新生活が、今始まろうとしている。
初めまして、デカい魚の煮付け.exe(別名義:夢遊鬱)です。
「魔女は星空の夢を見る」、私の一次創作キャラ達のストーリーとなっています。
本当に趣味の域を超えぬものですし、ド素人なので文章構成に難があるやもしれませんが、生暖かい目で見て頂けると幸いです。
連載を通し精進して参ります、よろしくお願いいたします。




