表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/50

第16話 生徒会からの通達(クエスト)と、作戦会議の迷走

 週明けの月曜日。放課後。

 俺たち『お任せ部』の部室に、招かれざる客が現れた。


 コン、コン。


 礼儀正しいノックと共に現れたのは、黒縁メガネをかけた真面目そうな男子生徒。

 生徒会副会長、東城寺(とうじょうじ)だ。

 彼は入室するなり、メガネのブリッジを中指でクイッと押し上げ、事務的な口調で告げた。


「失礼します。本日は生徒会長からの伝言(リマインド)を伝えに来ました」


 部室の空気がピリつく。

 陽奈が「うっ……」と身構え、金剛が「あぁん?」と眉をひそめ、クルミが彼の背後に隠れる。


「『お任せ部』認可から一週間。……現時点での実績はゼロ。活動報告書の提出もなし」


 副会長は手元のタブレットを淡々と読み上げる。


「約束の期限まで、あと3週間です。それまでに『学園への明確な貢献』が認められない場合、即刻廃部となります。……以上です」


 一礼し、踵を返す副会長。

 去り際に一度だけ、俺の方をチラリと見た気がしたが、彼はそのまま無言で出て行った。


 パタン、と扉が閉まる。

 数秒の沈黙の後。


「やーばーいー!! 忘れてたぁぁぁっ!!」


 陽奈が頭を抱えて絶叫した。

 ポニーテールが落雷を受けたように逆立っている。


「ど、どうしよう軍師くん! 廃部だよ!? 活動停止(BAN)だよ!? 私の銅像計画が白紙になっちゃう!」

「自業自得だ。先週は遊んでばっかりだったからな」

「うぅ……反論できない……!」


 陽奈は涙目でホワイトボードの前に飛び出し、マジックペンをひっ掴んだ。


「こ、こうなったら緊急作戦会議だよ! 一発逆転のド派手な実績を作らなきゃ! みんな、アイデア出して!」


 そう言って彼女がボードに書き殴り始めたのは、迷走そのものだった。


『案①:校庭に巨大ピラミッドを建設してパワースポットにする』

「却下だ。俺たちは土建屋じゃない。予算は誰が出すんだ」


『案②:全校生徒参加の24時間耐久強制鬼ごっこ(私が鬼)』

「却下だ。ただのテロ行為だ。死人が出る」


『案③:私が全校生徒の靴下を手洗いする』

「却下だ。需要がないし、お前の手が死ぬ」


 陽奈が「ええーっ!?」と不満げに声を上げる。

 すると、腕組みをしていた金剛が口を開いた。


「なら、俺が校門に立って、登校する生徒全員に『笑顔で挨拶』を強要するってのはどうだ? 平和になるぜ?」

「却下だ。お前の笑顔は『挨拶』じゃなくて『威嚇』だ。遅刻者が激増する」

「……あぁん?」


 金剛がピキッと反応するが事実だ。

 最後に、クルミがおずおずと手を挙げた。


「あ、あの……お花で冠を作って、みんなに配るのはどうですか……?」

「……可愛いが、実績としては弱すぎる。却下だ」


 俺はため息をつき、パイプ椅子から立ち上がった。

 このままでは、実績を作る前に学園を混乱に陥れて廃部になる未来(バッドエンド)しか見えない。


「……貸せ、天道。お前らの方針は根本的に間違っている」


 俺は陽奈からペンを取り上げ、ボードのカオスな文字を全て消した。

 そして、中央に大きく一言、書き記した。


生徒(ユーザー)不満(バグ)を解消する』


「……バグ?」


 陽奈がキョトンとして首を傾げる。


「そうだ。あの生徒会長(ラスボス)が評価するのは、『目に見える秩序の回復』だ。ピラミッド建設なんて派手なイベントじゃなくて、地道なトラブルシューティングこそが最短の攻略ルートなんだよ」


 俺はペン先でボードを叩いた。


「『困っていること』『直してほしいこと』。それを解決すれば、文句なしの貢献になる」

「なるほど! さすが軍師くん!」


 陽奈がポンと手を叩く。


「でも、依頼なんて来てないよ? 目安箱も空っぽだし」

依頼(クエスト)は待っていても発生しない。自分から受注しに行くんだ」

「受注しにいく……?」

「RPGの基本だろ。『街の人に話しかける』だ」


 俺は不敵に笑い、窓の外を指差した。


「情報の宝庫はどこだ? 全校生徒が集まり、噂話が飛び交う場所――」


 陽奈がハッとして、目を輝かせた。


「――学食!」

「正解だ。昼休みの学食に突撃して、生徒たちの『悩み事』を聞き出す。足で稼ぐぞ」

「おーっ! 聞き込み調査だね! なんか探偵みたいでカッコいい!」


 陽奈のポニーテールが、ご機嫌にブンブンと揺れる。

 単純な部長で助かる。

 俺たちは荷物をまとめ、部室を飛び出した。


「行くよみんな! クエスト・スタートだー!」


 こうして、俺たちお任せ部は学園の雑踏へと繰り出した。


 だが、俺たちはまだ知らなかった。

 そこで待ち受けているのが、陽奈の最も苦手とする『怪談』という名のクエストだということを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ