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新年の前日

よし、準備は全部できた。トーコ様にいただいた作戦ノートの確認も終わった。まずはわたしが実践しなくては。

「殿下、お呼びだとお聞きしました。」

「フィー、これからトーコ様の作戦を実行しないといけないんだが、わたしとフィーでまずは実行してみようと思う。手伝って欲しい。」

「ええ、殿下、元を辿ればわたくしたち二人の婚約式が発端です。元凶でもあります。どんな試練でも乗り越えたいと思います。」

「そうか、フィーにも辛い思いをさせた。今日を一緒に乗り越えよう。では、行くぞ。」

「はい。どこへでもついて参ります。」

「行くのは中庭だ。」

「え?中庭でございますか?」

「ああ、さぁ行こう。」


王太子殿下が婚約者のフィーナをエスコートしてたどり着いた中庭へ。


「まぁどこからか音楽が聴こえてきますわ。まぁあの木には素敵な装飾が。素敵です。」

「レディお手を。」

「・・・はい。殿下・・・。」

「大丈夫、フィー、ここにはわたしとフィーしかいないからね。護衛は遠くに配置してあるんだ。恥ずかしがらないで。」

「そうなんですの。でも、なんて美しい音楽と飾りなんでしょう。夢のようですわ。」

「フィー、中庭の女神の像のところまで行こう。」

「はい。殿下。」


中庭はクリスマスツリー用のオーナメント等で飾られ幻想的な雰囲気になっている。冬に聴きたくなる曲もいい感じに流れている。国民的歌手の曲もさすがというところ。

そしてフィーナが少し寒いかなと思ったところで、女神像の前に辿り着いたら、殿下がフィーナを後ろから抱きしめた。


「で、殿下!抱き着くなってはしたないですわ!」

「いいんだよ。フィー。これはトーコ様からのご指導があってね、明日は新年。今年最後の日を一番愛おしい人と過ごすんそうだ。そして寒い日だからこそ、こうしてくっついて温め合うといいそうだ。温かいかいフィー。わたしはフィーの温もりを感じているよ。この1年間大変な目に合わせてごめんね。わたしのせいで辛い目に合わせてごめんね。それでも一緒にいてくれてありがとう。幼馴染のフィーと婚約できて物凄く嬉しかった。大好きだよ。フィー。」

「殿下・・・。温かいです。わたくしも大好きです。」


二人は女神像の前でしっかり抱き合いお互いを温めあった。達成率も進んでいる。大丈夫だ。この国はまだ終わっていない。


「フィー、昔みたいにしっかり手を繋いで帰ろう。この後何組ものカップルをここに送り込まないといけないんだ。一緒に手伝って欲しい。」

「はい。殿下。一緒に行きましょう。」


この後、王宮で働くカップル、両片想いの両名を順次中庭に送り込んでいく。両片想いは王家の影が調べつくしてくれた。達成率を上げるため、これも国家プロジェクトなんだ。しっかり両想いになってくれ。


美しい音楽に綺麗に飾った木々、両片想いの男性の方には王太子殿下自ら指導した。これも仕事だといい、レディをしっかりエスコートし、ちゃんと告白するようにと言いつけた。すまん。達成率のためだ、恥ずかしがらず頑張ってくれ。男性もこれは仕事なんだということで、恥ずかしさを乗り越えられるだろう。大丈夫だ。相手のお女性もおまえのことが好きだとは言わなかった。やっぱりドラマも必要だろう。


王太子殿下の指導のもと、中庭に順次送り込まれたカップルはしっかり手を繋いで皆戻ってきた。初々しい二人は、寒い中歩いてきたのに関わらずほかほかの熱々の状態である。


「寒い日だからこそ、お互いの温もりが愛おしいものになるのだ。わかるか!?」

「殿下、わかりました!素晴らしいです。」

「殿下、ありがとうございました!思いが通じました!」

「こんなに人の手が温かいなんて一人の時には気づけませんでした!」

「寒さがこんなに良いものだと思いませんでした!!」

「寒い日万歳!」

「「「寒い日万歳!!」」」


透子に教えてもらった万歳を王太子殿下主導のもと口々に叫んでいたら、

ぱりんといつもの音がして、


冬の良さ発見を確認済。達成率80パーセント。


頭の中にメッセージが浮かんだ。


「やったー。トーコ様やりました!!」

「おお。とうとう80パーセントだ!」

「エミィー、エミィーの温もりを味わっただけで達成率あがったよ。凄いよ!」

「フレッド様と触れ合いことは魔女殿にも認められることだったのね。」

「おお!やった。大好きだよ。セリーヌ。」

「わたしもよ。また、あの美しい中庭を一緒に歩きたいわ。」

「わたしもだよ。」


さすがトーコ様の作戦だ。寒い日は愛しい人とべたべたにくっつくべし。凄い。こんな簡単なことで達成率があがるなんて。王宮の一角はカップルだらけで異様な空気だが、国家プロジェクトの成功がかかっていただけに、喜びもひと際だ。


「今日は協力してくれて、ありがとう。明日も王宮で新年の集まりがあるのでどうか参加してくれ。」

「殿下、是非、伺います。」

「今回の王宮で働くもの限定の集まりとても楽しみでございます。」

「「今日はありがとうございました!!」」


出来上がったばかりのカップルの熱気に当てられながらも、フィーと手を繋ぎながら歩く。もう殿下ったらと恥ずかしがりながらも嬉しそうにフィーが微笑む。わたしの婚約者がフィーで良かった・・・。

明日も頑張ろう。心はほかほかになってきている。後少し。後少しで春が来る。こんなに待ち遠しい夜は初めてだ。



そして新年。夜は例年の新年のパーティがあるが、今日はトーコ様の第二の作戦の日である。王宮で働くものを労うのだと聞かされた。

大ホールに王宮で働く半分ぐらいの人々に集まってもらった。残りの半分は食堂や給仕や警護に従事していて全員は集合できないので、二部制だ。後で交代してもらう予定。

集まってもらったみんなは少しおしゃれしてわくわくしている。


「今から配る料理は三魔女殿の故郷の料理だ。新年に食べるお雑煮というものだ。是非味わって食べて欲しい。」


これは前回王宮に三人が来た時に、洋子が料理人に教えていたものだ。お餅や白味噌はその時に大量に持ち込んでおいた。餅はカビないように真空パック入りにしたので大丈夫。

初めて食べるお雑煮に恐る恐る口をつける人々。


「あ、美味しいです。」

「この白いものは伸びます。うわー切れない。」

「なんだ。初めて食べますが、美味しい。」

「これが三魔女殿の故郷の味なんですね。」

「熱々で体が温まります!」


お雑煮は美味しい。間違いがないとヨーコ様がおっしゃっていたとおり、皆に絶賛されて受け入れられた。いい感じだ。美味しい美味しいと食べ終わったところで、食器を片付けてもらうと、


「みんなこっちに並んでくれ。」


王太子殿下に呼ばれざわざわしながら一列に並んだ。

王太子殿下は隣の側近から小さな袋を受け取ると、みんなに伝える。


「1年間、長い冬の中を王宮から逃げずに働いてきてくれてありがとう。これはトーコ様から教えていただいたもので、1年間の感謝の気持ちのお年玉というものだ。少しだけだけど、わたしからの感謝の気持ちだ。これで良い年を迎えてくれ。」


そういって、一人一人に感謝の言葉とお年玉を手渡していく。みな、王太子殿下から直接に感謝の言葉をいただき、猛烈に感動していた。そして手渡された袋の中身は銀貨が3枚入っていた。こっちの価値でいえば3万円ぐらい。ぷちボーナスのようなもの。食糧難で財源が苦しい中準備できるぎりぎりのところ。無理しすぎて崩壊してもダメだしね。


袋を開けて銀貨の数を確認して素直にみんな喜んでいる。ボーナスというものがない世界だ。いただけるだけで有難い。新年は交代でお休みもいただける。実家に帰る人も多いので、これで実家にお土産が買えるとほくほくである。


ちなみにぽち袋は前回の上映会に来られた時に時にトーコ様が持ち込んだもので、100均で仕入れてきたとおっしゃっていた。可愛いからこれに入れてねと言うトーコ様の声に従ってみた。とても上等な白い厚手の紙に綺麗な色の模様の入った袋はそれだけで喜ばれるだろう。全部使わなかったので残りがあり、今後同じようなものが作れないか研究中である。


最後の一人に感謝の言葉とお年玉を渡し終わった。


「新年は寒いがそのせいで凛とした空気で身が引き締まるようだ。そんな寒い中、温かい美味しいものをみんなでいただき、お年玉で心も温かくなったかと思う。身も心も温かくなる日。それが新年だ。新たな年を、おめでとう!」

「「「おめでとうございます!!!」」」


ぱりん・・・ぱりん・・・ぱき・・・ぱ・ぱらら


冬の良さ発見を確認済。達成率100パーセント。

長き冬はこれで終わり。

冬の良さを発見してくれてありがとう。

後は自然と春がくるでしょう。


頭の中にいつもと違う長いメッセージが浮かんだ。


頭に浮かぶメッセージが最初は理解できなかったが、じわりと実感がおそってきた。

ぶわっと涙がこぼれる。長い長い11か月だった。試練の11か月が終る。やっと終わる。

冬は寒いとしか思えなかったのに、今はたくさん冬の良いところが言える。温かいこたつや火鉢で温まりながら飲むお酒。リバーシや雪合戦で大人も子どもも一緒に遊んだ。冬の夜長に剣客シリーズを読む楽しみ。寒い日に愛しい人と手を繋ぎ互いの温もりを感じられること、働いてくれた部下や使用人に感謝する特別な日を知った。

冬の魔女殿申し訳ございませんでした。

冬もまた我々の生活に必要な時間だというのを再確認できました。

そして三魔女殿わたし達を救ってくださってありがとうございます。

王国はこれからいつもどおりなら2週間ほどで春がくるだろう。

春を待つ楽しみが、今までよりずっとずっと待ち焦がれる日々が愛おしい。感謝の日々になりそうだ。

新年の行事がすべて終わったら、三魔女殿にお礼を伝えに行こう。



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