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修行(瞑想、ヨガ、光の中のミサキ)

復讐のために身を削る僕。

彼は己がこのまま絶望に向かい、その果てに死があることを悟る。


ある日、出会った少女ヒカリ。

彼女は死んだミサキが自分の本当の母親だと言う。

そして、彼女は高次の存在、この世界のメサイアだった。


ヒカリは光の内側へと到達する方法を「僕」に伝えた。

メディテーション。修行の日々の始まりだった。

 家に帰るやいなや、瞑想を実践してみた。当然だが、いきなり効果の出るもんではない。

 かなりの時間瞑想した。

 それはそのまま、光の内側に入りたい心の現れでもあるのだ。


 座禅を組んでの瞑想は僕にはハードルが高いように感じられた。ネットで検索すると、立禅なる立ったまま行う瞑想法に行き着いた。


 座っているとどうしても脚の感覚に気を散らされてしまう。

だけど立禅のスタイルでも、時間が経つと集中力が途切れて、心は無数の雑念を生み出すようになった。


 憎い。愛しい。死にたくない。ミサキ、ミサキ、ミサキ。


 しばらくの間、僕は、瞑想を日課にしてみた。 

 ネットでその手の本も揃えた。

 読んで理解は出来るのだが、実体験にするにはどれほどの修行をすれば良いのか皆目見当もつかない。

 調べていくうちにヨガをすると良いことがわかってきた。

 元々は瞑想を楽な姿勢で実践するための体作りがヨガだったとある本には記されていた。


 そんなある日、僕は夢を見た。

 夢の中で僕は大通りで誰かを待っていた。

 少女が話し掛けてきた。

「待ち合わせ場所はそこじゃないよ」

 ヒカリだった。


 僕は彼女に連れられてトンネルのようなものを抜けて、開けた場所に出た。

 ヒカリはいつの間にかいなくなっていた。

 誰かが僕の名前を呼んだ。

 振り返る。

 ミサキだった。

 彼女は笑っていた。


 目を覚した時、自分の頬を伝う涙に気付いた。

 修行しよう。それしかない。


 食生活にも修行僧らしく工夫をした。

 まず動物性タンパク質を避け、アルカリ食品のものにした。

 タンパク質を多くカロリーを低めに。低カロリー高タンパク質の生活である。

 酒とタバコも辞めた。僕は酒もタバコも依存度が低いのでそれほど、というか全く苦労はしなかった。


 三週間過ぎたくらいから、夜寝ているときの夢の内容があきらかに変化したのに気がついだ。


 不思議なことに、ミサキの夢を見ても悲しいという感情が生じにくくなっていた。

 以前と同じような夢を見る。

 開けた草原のような場所でミサキが笑っている。

 僕もそれにつられて笑ってしまう。

 夢の中でヒカリの声を聞いた。


「大丈夫、それでいいんだよ」


 目を覚した時、僕の心は何年も感じたことのない喜びで満たされていた。


 ヒカリって何者だろう?

 僕の頭にクエスチョンマークが点滅していた。

 最近、昔ならばあり得ないような夢の内容を明確に細部に渡って記憶するという現象が起き始めている。

 久々に寝起きの一服がしたかったけど我慢した。


 また夢を見る。

 ミサキが現れる。


 僕はミサキの顔をまじまじと眺めた。

 その細やかな笑い皺や控え目に浮き出たそばかすは、

 僕の心を高揚させた。

 これは夢だ。僕はその時そのことに気付いた。

 以前、本で読んだ。明晰夢というやつだ。


「もしかしてここは光の内側なのか?」

 僕は思わず彼女にそう聞いていた。

「もし一生夢の中にいられるなら、それが答えよ。でもあなたは、再び夢から覚めて現実世界という光の外側の人間になるわ」

「メディテーションだよね、それを身につければ限りなく光の内側にいられるんだね」

「そう。メディテーション。私は肉体を失ったわ。でも魂は不滅なの」


 僕は修行僧の如くトレーニングに励んだことは無駄でなかったという事実を確認できただけで、この夢が覚めても生きていける。

 そう信じれる。

 

 そうだ、僕は生きている。

 ミサキはこの世界からただ消滅したわけではない。

 光の内側にいる。

 僕の心から憎しみの感情は、ほとんどなくなっていた。

 残された人生を僕はどう歩むのだろう。


 何が起ころうと僕は希望を捨てはしない。

 ミサキへの気持ちは好ましい形に昇華して、それは普遍的な愛とも呼べるものに変わっていた。


「あなたはもう大丈夫」

 ヒカリの声が夢の大地を覆う青空から降りてきた。


「だけど、影の存在には気を付けて」

「影? なんのことだろう」


 そこで夢から覚めて、呆然としていた。

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