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はじまりの その九

私が女王アリのお部屋に一歩入ったそこで、やはりスマホから警戒音が発せられた。だがその音は、私こそが警戒したい音だった。


テレレテッテレ~。


「クエスト ダンジョンボスの討伐

 達成条件 クロジクアリの女王アリの討伐」


「言われなくてわかっているわよ!!」


私はずぼっと剣を持つ手を繭から出した。

ボスを前に怯むばかりであったが。

目の前の女王アリは、事前情報では攻撃力皆無などとあるが、巨大すぎる芋虫姿であろうと頭と胸部はアリなのだ。それに確実に、とてつもないHPは持っているに違いない。

また、顔がアリのままだというならば、噛みつく事も可能である。


もしも噛みつかれたら、そこで終わりね。


デーンデン、デーンデンデン、デレデンデンデンデ~デンデデデデンデ。


脅えた私を鼓舞するように、暗く重く、しかし、ハードなメロディが流れ始めた。

アイザックがゲルタという弦楽器を「半音下げ~」と喜びながらチューニングし、そしてそのゲルタを使って演奏する時の音だった。いや、アイザックが奏でるメタルというメロディそのものだった。

音楽を金属と称する意味が分からないが、私は自分が怒っているのは分かる。


私をこんな状況に落としたのがアイザックなのに、アイザックは私を助けるどころかゲルタを弾いて喜んでいる!!


本当は事前に演奏したメロディをスマホに録音しただけだと分かっているけれど、私の頭の中にはゲルタを弾くアイザックのイメージしかないのだ。


ピープピープ。


「冒険者ヨッコはバーサク状態になりました

 筋力が5UPしました

 MPが3マイナスしました        」


「うるさいいいいいい!!」


女王アリの顔がアイザックにしか見えなくなった。

私は女王へと突撃した。

あのクロジクアリ(働きアリ・成虫)だって、お腹をクロジクアリ(幼虫)に齧られただけで死んじゃったのよ。


「はあああああ!!」


女王の気持悪いでろでろの大きいだけの白い部分に剣を刺し、切り裂いた。


ぐぎゃあああああああああああ。

きゅいいいいいいいいいいいん。


女王アリの悲鳴は、アイザックが奏でる重低音の響きと重なった。

次にズズンと巨大な女王が倒れた振動が地面に響く。

そしてその後は、世界は静寂となった。


暗かった世界に急に眩しい光が灯される

地下なのに? 照明ないのに?


「ボス討伐 クエスト達成しました。

 冒険者ヨッコ

 レベルが上がりました。

 HPが5上がりました。

 MPが3上がりました。

 SPが2上がりました。

 クロジクアリダンジョン踏破者称号を手に入れました。

 いまだ、バーサク状態です。           」


「当り前だああああああ」

ゲルタ 異世界でギターと一番似ている弦楽器

半音下げチューニング メタルな音はこうして出るそうです

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