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はじまりの その五

ゆっさゆっさ揺らされながら運ばれていた私達だが、終にはどこかに収納された。

放り投げるどころか、そっと優しく私と赤ちゃん入りの繭が置かれた事は驚いた。

そしてその後は動かされる事は無く、しんと静かなままである。


「どうしよう」

きゅうう。


泣きそうな私に追い打ちのように、私のお腹が追撃をしてくれた。

こんな時まで「お腹が空いた」と自己主張して来るとは!!


ちゅ、ちゅ。


ちゅ?


私の腕の中の赤ん坊が指をおしゃぶりしてた。

赤ちゃんのその幼気な姿が、実家にいた妹と弟の姿に重なった。お腹を空かせたあの子達も、ずっとずっと指をしゃぶっていた。指がふやけちゃってても、ずっとずっとあの子達は指をしゃぶっていた。


知ってる。私知っている。

お兄ちゃんが時々ギルド経由で実家に幼児用携帯食を送ってること。

弟妹達の為に。


ギルド経由なのは私達の居場所が親に分からないようにで、お金じゃなくて現物なのは、お金を送っても親が使うばかりで弟妹達は飢えたままってわかってるから。


「つらすぎる」


私は思い出した弟妹のことよりも、思い出した実親のろくでなしぶりの方がきつかった。涙がポロポロ出るくらい悲しくなった。

でもってやっぱり、きっと親には愛されていたはずの希望っぽいこの赤ちゃんが、このまま餓死してくのが許せなくて辛くなった。私が拾ったばっかりに!!


「ごめ、ごめんね。赤ちゃんこそお腹が空いていたね」


私は役に立たないふざけんなスマホを鞄に片し、その代わりとして食べられるものが無いかと鞄を探る。

私の右手が掴んだものは、赤ん坊には食べられない干し肉一片だけだった。


「ごめんね、赤ちゃん。こんなものしかって」


赤ん坊は両手で私の右手を掴み、さらに、私の右手が掴んでいた干し肉にしゃぶり付いた。そのうちに私の手からしっかりと干し肉を奪い、ちゅぱちゅぱと美味しそうにしゃぶっている。


モンスター? やっぱモンスター?

そうだよ。指から糸が出てくる人間なんているはずがないって、あれ?


赤ん坊はがむしゃらに干し肉にしゃぶり付いているが、干し肉をしっかり握る赤ん坊の指先からその先に変化があったのだ。


赤ちゃんが指を動かすたびに、繭に貼り付いていたはずの糸が剥がれたりくっついたりしているのだ。


そうか、繭って糸をめぐらして作るものだものね。

モンスターに破られもしなかった強靭なものだけど、内側から糸を解いて行けば外に出られるんじゃないの?


私は右手を鞄にいれ、糸を巻き取っていけるはずのものを取り出した。

糸の巻き芯となるものが無いならば、作ってみましょうこのヘアゴムで。

これに糸を絡めて最初の核となるものを作ることができるんじゃないの、というグッドアイディア。さすが私。さすわた。


でもって巻き取る時は毛糸玉みたいに球体にしなくて、コッペパンみたいな形にして、そのコッペパンを糸巻の芯にしてくるくると巻き取っていけばいいんじゃないの。そしたら、赤ちゃんを抱いたままで右手だけでくるくる糸巻きしていけるんじゃない?


「さすわた!!」


自画自賛すれば決行だ。

私は自分が考えた通りに糸を巻いていく。

コッペパン型というか、棒状なものを作るまでは両手が必要だったが、いざ棒状のものが出来上がると強靭な糸の性質か木の棒そのものの強度となった。だからその後は簡単だった。棒を持った片手をグルグル回すだけですいすいと糸が巻かれていく。

そして、どんどんと繭の厚みが薄くなって、繭の外の世界を明らかにしていく。


私の右手はピタリと止まった。

繭の外の視界から視線も思考も逸らしたくなったのだ。


世界は真っ暗じゃ無かった。

洞窟らしき壁は微かに輝いているし、私達以外の生き物こそ仄かな光を発していた。お陰で目の前が真っ暗だよ。


私達が入っていた繭は、ずらっと並ぶ数百? 数千? の卵の中にあったのだ。

そしてその卵は、時々ぐねっと動いている。

まるで私達が入っている繭みたいにして。


ここ、もしかして、モンスターの育児室ですか?


「赤ちゃん繋がり案件止めてええええええ」

ここから先は童話の定義のQ&Aにあります「残酷描写等に関しましては児童を読むことを前提に考えて下さると幸いです」という運営さんの気持を台無しにします。

次の話から、虫ぐっちゃぐっちゃです。

つまり、冬の童話祭に参加できないと自己判断しました理由ですね。orz

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