出会いな その後で
私は今日もギルドにて、底辺冒険者でもできる依頼を探しに来ている。
もちろん、大事な私の赤ちゃんも背負って。
そんな私に受け付けのお兄さん、アイザックさんがニヤニヤ顔で声をかける。
「ニート背負って冒険しようの気持は変わんないんだ?」
「うん。お兄ちゃんいないし、暇だし、むちゅちゃんのご飯代も実家の弟妹達が実家を脱出するための資金も必要だし」
アイザックさんはやれやれという顔をして、窓口に立つ私に依頼書を渡した。
私はアリの巣ダンジョンを踏破したことでE級冒険者になっている。
まだまだ底辺で、薬草採取しか出来ないけれど。
「ええと、これは」
「カエデ商会の事務助手の募集だね。まずは三ヶ月のお試し。チャレンジしてみたら? ギルドで冒険者するよりも安全だよ。それに、経理とか事務のスキルがあれば、15歳になったらギルドに就職できる」
「あら。カエデ商会の方がお給料がずっと良い気がしますけど?」
「来年君は別の町に行かなきゃだから、ギルドだね」
「どういう意味ですか?」
アイザックは悪人みたいな顔になって声を潜め、私の耳に内緒話を落し込んだ。
「来年はコノハナ町にハインリヒがギルドマスターとして異動する。魔素の発生がヤバイくてね、Sくらいのダンジョンが生まれそうな勢いなんだ」
それは、ハインリヒさんたら私もコノハナ町に連れて行くつもりだって意味だよね。ハインリヒさんの心遣いに胸が温かくなる。それでもってアイザックさんも。
新ダンジョンが生まれそうって企業秘密まで教えてくれるなんて。
新ダンジョン?
あ、新ダンジョンが発生したら、ギルドは必ずダンジョンレベル審査をしなきゃいけないってルールある。通常はお抱え冒険者を投入するけれど、難易度高いダンジョンには?
「Sだったら勇者呼ばなきゃ」
兄は勇者チームの一員だ。
私は兄に再会できる? と、希望がむくむく。
「そう。それでもしそのダンジョンが気に入ったんなら、きっと勇者はダンジョン踏破できるまでダラダラ町に居座るだろうね」
私はアイザックさんから奪うように依頼書を受け取った。
15歳になったらギルドに就職できるように、まずはカエデ商会で事務を修行だ。
ギルド職員だったらお兄ちゃんのサポートできるし、お兄ちゃんが困った時には私が助けに動いてあげられる。
アイザックさんが私を助けに来てくれた時みたいに。
私には無敵になれるアイテム、むちゃちゃんがついているんだし!!
「さあ、行くぞ。むちゃちゃん」
むっちゃむっちゃむっちゃむっちゃ。
「面接にはソレはおいていきなさ~い」
あ、そだった。
私は鞄からスマホを取り出し、アイザックさんの机の上に置いた。
事務員になるならスマホは返却しなきゃ。
アイザックさんは不貞腐れた顔でスマホを私に突き返し、私の体に腕を回す。
え?
「むちゃは僕が預かる」
「いえ。アイザックさんのスマホよりこの子役に立つんで、大丈夫です」