出会いな その四
私が乱入したその後、私を殴りかけた事と私が繭人間となった事で、勇者とお兄ちゃんは冷静になって拳を収めました。けれど町を破壊した事については無かったことにはできません。
お兄ちゃんと勇者は、仲良くギルドの牢屋の中の人になりました。
ですが、お兄ちゃん達を牢屋に入れてお終いではありません。
町の偉いさんやギルドの偉いさんで、二人の処遇について喧々囂々と審議されたそうです。その期間、貫徹状態で二日。それで朦朧としたのかどうでも良くなったのか、兄達に町の損害賠償を求めることは不問となりました。
ありがとうございます。
っていうか、全てお金で解決できたそうです。
私の赤ちゃんの生み出す繭の糸が、なんかすごいレアアイテムだったそうですよ。
二回の繭分の糸で、町を作り変えられるぐらいのお金になるらしいです。
赤ちゃんすごい。巻き取って保管してた私、先見の明あり!!
でも損害賠償から逃げられても、破壊行動については完全不問にはなりません。
二人はガブリエンナから永久追放になったのです。
けれど兄は追放されるにあたって、冒険者登録を抹消されることはありませんでした。
それは、兄が冒険者でなくなると勇者が暴れるからと、大人の判断があったからでしょう。ハインリヒさんなんか、「拾ったんだから最後まで面倒見ろ」と、まるで勇者が捨て犬みたいなことを言って兄を叱りつけたほどです。
なんでもギルドルール以前に、兄が殆ど浮浪児な勇者を拾ってガブリエンナに連れ帰って来た、そうです。でもって、私に内緒で私達と同じ宿で勇者の面倒も兄が見ていたなんて。やっぱ捨て犬かよ、勇者!!
それで勇者のお守り役となった兄は勇者とチームを組み(勇者めっちゃ嬉しそう+私へのふふん顔はまじムカついた)、勇者の冒険の旅へと旅立っていきました。
町に一人残された私は、ハインリヒさんが親代わりとなってくれ、今は宿屋ではなくハインリヒさんの家に居候させてもらっています。
ハインリヒさんの奥さんは美人な上に優しいので、兄は残していく私について物凄く心配しながらもどこかホッとした表情をしていた、と思い出します。
そうですよね。
お兄ちゃんこそ世界に羽ばたける人だもの。
規格外過ぎて勇者認定されそうな危険人物だったのだもの。
これからきっと勇者と一緒に、楽しい冒険の日々が始まるんだろうな。
そうそう、私の赤ちゃんのことですが、やっぱり魔物でした。
レアモンスターの「金色姫」様でした。
食事を与えると必ず恩返ししてくれる、とても良いものです。
幸運をくれるだけの無害なモンスターもいるんですね。だけど喰っちゃ寝しかしないので、本当に赤ちゃんみたいにお世話するしかないようです。
アイザックさんはレアモンであった赤ちゃんに「ニート」と勝手に名付け、私が赤ちゃんにつけてあげた名前で呼んでくれません。
むちゅちゃんって、可愛いと思うのですが。
可愛いよね、ハインリヒさんの奥さんのアマンダさんだって、むちゅちゃーんって呼んで可愛がっているんだもの。
「でもって、ニート背負って冒険しようの気持は変わんないんだ?」