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異世界の辺境でもふもふといっしょにのんびり暮らします~虐待された少女は異世界の夢を見るか~  作者: くーねるでぶる(戒め)


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041 呪い

 叔父さんが死んじゃう。親族が死ぬかもしれないというのに、まったく悲しくない私は心が冷たい人間なのかもしれない。


「叔父さんはそんな危険な剣と鎧を使ってまで、私とクロを殺したかったのかな……?」


 今更叔父さんにどれだけ嫌われていようと平気だけど、そこまで恨まれるようなことを私たちはしてしまったのかな?


 まったく身に覚えがないけど、そうだとしたら悲しすぎる。


「理由はどうであれ、この男は街を人質にとってまで私たちを殺そうとしました。犯罪者に心を重ねてもいいことなんてありませんわ」

「犯罪者……」


 そっか、叔父さんは犯罪者になっちゃったのか。


 私は周りを見渡すと、叔父さんの攻撃でいくつも家が壊れていた。


 街を壊すなんて脅したり、私たちを殺そうとしたり、実際に家をいくつも壊したり……。叔父さんは許されないことをしてしまった。


「叔父さんはどうなるの?」

「おそらくですが、処刑されるでしょう。こんなに強力な呪われた剣と鎧を装備しているんですもの、危なくて投獄もままなりませんわ」

「そっか……」

「にゃ? 今頃、兵隊さんのご登場だにゃ」


 アメリーの声に振り向けば、銀色に輝くピカピカの鎧を着た兵隊さんたちがこっちに向かってるのが見えた。


 叔父さんを兵隊さんに引き渡せば処刑になる。叔父さんを助けるなら今が最後のチャンスだ。


「…………」


 でも、私は叔父さんを助けるために動けなかった。


「その男が今回の騒動の首謀者か? 貴君らが退治したのか?」

「はい。あなた方に引き渡しますわ。今は魔法で気絶していますが、呪われた装備を身に着けているため武装解除ができません」

「厄介な……」


 それからの私は、まるで傍観者のように成り行きを見守っていた。


 事務的な手続きはすべてシヤがやってくれた。叔父さんを兵隊さんに引き渡して、詳しい事情説明もしてくれる。その際に、犯人が私の叔父であることは、私のことを思ってか、シヤは話さなかった。


 私はなんともいえない気持ちを抱えたまま、叔父さんが兵隊さんたちに連れていかれるのを見ていることしかできなかった。



 ◇



 白昼堂々の叔父さんとコンドラートの来襲事件から数日。ドッセーナの街はいつもの落ち着きを取り戻していた。


 私は見に行かなかったけど、叔父さんは街の広場で公開処刑されてしまったらしい。今になっても私は広場に行くことができなかった。


 私の心は複雑だ。私にも叔父さんを憎む気持ちは確かにある。でも、殺したいほど憎んでいたのかと問われれば考えてしまうことだろう。


 できることなら、叔父さんには罪を償って生きていてほしかった。


 でも、叔父さんは呪いの装備を身に着けていたし、それが現実的ではないことも分かっている。


 なんだか私の心は穴が開いてしまったかのように無気力だった。


 そういえば、叔父さんと共に現れたコンドラートだけど、彼は兵隊さんたちが探しに行った時には、もう逃げてしまった後だったらしい。


 ドラゴン同士の殺し合いは禁じられているから、グウェナエルはコンドラートを殺さなかったようだ。


 これも私の心がすっきりしない原因の一つかもしれない。


 だって、明らかに今回の襲撃の首謀者はコンドラートだ。叔父さんはただ体よく利用されただけだろう。なのに、事件の首謀者は叔父さんということになって処刑されてしまった。


 シヤに聞いた話によると、事件の首謀者に逃げられたというのは体裁が悪いから、叔父さんを首謀者に仕立て上げたのではないかということらしい。


 なんだか心がもにょもにょする。


 でも、今回の事件でよかったこともあった。街を襲ったドラゴンと叔父さんを倒したことによって、ドッセーナの街の人たちから信頼を得ることができたのだ。


 一番の問題だったグウェナエルを討伐してしまおうという話は、グウェナエルが街を襲おうとしたコンドラートをやっつけたおかげで綺麗さっぱり無くなったのだ。


 たぶん、グウェナエルが居ることに街のみんなが慣れてきていたのも関係あるのだろう。


 今ではグウェナエルは街の人気者になりつつあった。


 私たちも、今では冒険者の人たちと気さくに挨拶を交わすまでになっていた。


「マイ、準備はできたにゃ?」

「うん!」


 そして、今日は領主様に改めてお城に招待されているのだ。


 どうやら街を守ったことを褒めてもらえるらしい。


 それから、王都への護衛の件の話を詰めるようだ。


 ドラゴンは珍しく、またドラゴンを従えている者となると、更に珍しい。事前に聞いた話でも、私たち以外にも護衛の人が居るみたいだし、たぶん私たちは物珍しさから声をかけられたのだろう。


 叔父さんが居なくなっても毎日は続いていく。決して好きな人ではなかったけど、やっぱり死んじゃうのは悲しいのかもしれない。


 私の心にあるわだかまりは、時間が癒してくれるのだろうか?


「舞よ、準備ができたなら行くぞ? 今日は領主とやらに会うのだろう? どれほど偉い奴かは知らんが、気持ちで負けぬようにな。相手に隙があれば、いつでも一撃できるだけの胆力が必要だぞ?」

「もう、そんなことしないってば」


 気遣ってくれるのは嬉しいけど、クロの考えってわりと野性的で弱肉強食なのよね……。

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