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そして北部平定へ

「……やっと出てきましたか。随分遅かったですね。

それで、長老はどんな様子でしたか?」


妙な疲労感を引きずりながら何とか出てきたら、待ち受けていた陰険野郎に捕まった。

開口一番そう聞かれて何かが切れて、気づいた時には襟首引っ掴んで頭突きを食らわせていた。

重く鈍い音が響き、額に痛みが走るがそんなことも気にならない。


「――諸々どういうことよ!

全く聞いていない話だらけだったんですけど!?」


胸ぐらを掴んだまま、噛みつかんばかりの勢いでヘリアンサスは問い詰めた。

陰険野郎はそれでも涼しい顔で、低い位置にある聖女の顔を見つめる。


「おや、何かお気に召しませんでしたか?」

「お気に召さないだらけですけど!?

聖女劇場なんか開かれたら堪ったもんじゃないのよこっちは!!

どうしてくれんのよこの惨状ーー!!」

「そう言われても、いつまでもカエルムに時間を取られるわけには行きませんので。

伯爵御本人の了承を得たは良いですが、長老を置き去りに勝手に事を進めるのは、あまりに敬意に欠けた振る舞いです。

そうは言ってもあまり悠長にもしていられません。

ここは荒療治も必要と判断したまでですよ」


その答えに、一瞬ごっそり表情が抜ける。

まあ確かに、以前の一件から、今後政略的に利用されるだろうなとは思っていた。

だが、まさかここまでされるとは。

そしてここまで負担がかかるとは。

驚きの連続だ。


「………………へえそう。

あそこで、私が、止めに入ると。

続きを引き受けると。

まだ出会って間もないのにそこまで信じて貰えたなんて、嬉しすぎて涙が出そうだわ」


ヘリアンサスは疲れも忘れて、怒りを孕んだ全開の笑顔を浮かべた。

それを陰険野郎は負けず劣らずの笑顔で迎え撃った。


「それはもう、信託を受けて我が国をお救い下さる聖女様を、信じずしてどうするのです。

これくらいはお安い御用です。

憎まれ役がいてこそ聖女様のお優しさが際立つというものでしょう?」


「………………」


良く分かった、こいつは外道だ。

確かに効率面だけを考えれば正しかろうが、標的と周囲への負担を度外視しすぎだろう。

笑い合っていると笑顔が引き攣りそうになってくる。

というか真面目に、そろそろ顔が攣りそうだ。

疲れた。さっさとこいつと別れて安全な部屋で寛ぎたい……しかしそんなささやかな願いも断ち切るように陰険野郎は笑みを深める。

まだ終わらせる気はないようだった。


「そもそも、いつまでもここにかかずらっていられる状況ではありません。

次なる目標に取り掛かりましょう、聖女様」


そう言って陰険野郎は、懐から一枚の紙を取り出し広げた。

夕風に広がったそれは影で良く見えないが、見覚えのない貴族の家紋らしきものが一瞬目を掠めた。


「ノックス侯爵の転向にグラディウス元帥の帰還。

何より聖女様のお墨付きがあるとのことで、大分風向きが変わってきました。

一時期は中央貴族の味方など数えるほどしかおらず、どうなるかと危ぶまれましたが……

こうなった以上、次は北部貴族に狙いを定めるべきでしょう。

身内の諍いで色々不義理を働いてしまった彼らを、我が国に繋ぎとめるために」



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