ことは収まったのだから良しとしよう、そうしよう
「……あれから、倅とも色々話をした。
それで今日、正式に国王派に転向する旨を発信するそうだ」
長老は窓辺の景色を見つめ、ふうと黄昏れるようなため息を付く。
すったもんだしたあの日の出来事から、既に数日が経っていた。
向かいに座るヘリアンサスは、戦々恐々とその様子を見守るが、長老はもう落ち着いているようだった。
「時代は移り変わっていくのだな。
庶出の王が立ち、諍いは忘れられ、かと思えば再燃し……確かなものは何も無い。
貴様もじき、ここから発つのだろう?」
「それは、情勢の変化次第ですが。
多分そうなるでしょう。
ですがそれまでに、またお茶をご一緒しませんか?
ベアトリス様からも是非にと誘われておりますし……」
「だ、誰がベアトリスに会いたいと言ったか!そういう話ではない!!」
途端に顔を赤くし、大きな咳払いをする。
「とにかく、貴様ともこれでおさらばと、そういうことになるのだろう!?」
「……はい、恐らくは。
短い間でしたが長老様には大変良くして頂き、感謝の思いに絶えません」
「……そうか、だが必ずまた来い。
まだこの街の名物も紹介しきれておらんしな!
いや曲がりなりにも客分に、存分なもてなしができなかったとあってはワシの沽券に関わるというだけで――」
内容と言い方が釣り合わない、この何とも言えない言い方も今となっては慣れたものだ……少し頭を抱えたくなる感じはあるが。
一体全体こちらにどういう反応を求めているのだろうか。
長老は微妙に赤い顔のまま「それに……」と続ける。
「……貴様も、博打を打っているようだがな。
どうあっても行き詰まりそうならここに逃げてきて良いぞ。
聖女なんぞ、そんなお題目のために犠牲になることはない」
「……はい、その、ありがとうございます。
もしもの時はリリウムだけでもお守り下されば……」
「何を言うかワシがここまで言ってやっているのだから来るのならば二人で来い!!
……ふ、ふん!一時的にも軒先を貸してやった相手が吊るされるなど、気分が悪いからな!!
べべ別に他意があるわけではないが!」
…………なんか一層悪化している気もするが、ことは収まったのだから良しとしよう。そうしよう。




