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飾り棚のロケット

一時間後部屋を追い出されたヘリアンサスは、焦りを持て余しながら庭を闊歩していた。

駄目元で使用人たちへの聞き込みもしてみたが、まあ、仕える主人の私事に関わることだ。

口を割って貰えるはずがない。


もう駄目だ。お手上げである。

直接説得しようにもあの有り様だし、手紙を書いても返事がない。

ヘリアンサスは歩きながら、これ以上どうすれば良いのか途方に暮れていた。

黒髪男や歌姫や神官や町人から情報を仕入れたは良いが、肝心の長老に関してはこの数日というものまるで進捗がなかった。

何だかんだ長老とも親しくなれたと思うのだが、肝心の説得の方は停滞している。

相手の年齢が年齢なので、あまり無茶苦茶できないということもある。

折に触れて色々説得は試みているが、どうにも攻めあぐねているのが現状だ。

何か決め手か、手がかりになるようなものが欲しい。

それに何だろう、以前からちょくちょく違和感というか、引っ掛かるものがあるのだ。

漫然と考えながら歩いていた時それは起こった。


「……っ!?」

「あ、聖女様……申し訳ございません、大丈夫ですか!?」


ぐるんと視界が回り、腰に衝撃が打ち付ける。

派手に尻もちをついた衝撃も冷めやらぬ間に、使用人の慌てた声が聞こえる。

リリウムに手を貸してもらって立ち上がりながら、ぶつかったものを見つめた。


「飾り棚……ですか?」

「は、はい。十年ほど前まで、長老様がお使いになっていたもので。

今は虫干しもかねて、蔵のものの整頓を行っていたのです。

そこに置きっぱなしにしてしまい、失礼を……」

「いいえ、それは大丈夫ですが……」


ぶつかった衝撃でか、棚が半開きになっている。

その奥で何か光った気がして、何気なく覗き込んだ。


「あら、これは……ロケットですか?」

「これは……気が付きませんでした。

いつの間にか入り込んで、ずっと入れっぱなしになっていたのでしょうね。

そのままにされていたのですし、きっと大したものではないでしょう」


確かに、それほど高価な感じではなかった。

伯爵家の持ち物にはそぐわないほどだ。

けれど何か気になって、手にとってまじまじ見つめてしまう。

使用人はそれに少し困ったようにしたが、やがて


「お気に召したのでしょうか?

ですが、長老様の物であるかもしれない以上、一存で差し上げるわけにも……

もしもご所望でしたら、長老様にお伺いを立てて参りますが……」

「ああ、良いのです。そのような……

ただ少し、気になってしまって。

そうですね。私から長老様に申し上げますので、少々預かっても構いませんか?」

「そ、そうですか。承知致しました。

ですがくれぐれも、長老様を刺激することは……

最近は、気が立っておられるようですので」

「気をつけます。

いつもながらご迷惑をおかけし、申し訳なく思っておりますわ」


使用人と別れてから、改めてロケットを見つめた。

掌に収まるほどの大きさで、素材は銅だろうか。

好奇心に抗えず、蓋を開いて中を覗いてみる。

――そこに収められていたのは、古く、擦り切れた女性の絵姿だった。


「…………?」


リリウムが不思議そうな顔をする。

ヘリアンサスも気にかかるものがあった。

何か、見覚えがあるような気がしたのだ。

胸に渦巻く違和感のまま、暫くの間それをじっと見下ろしていた。



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