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戦乙女の公爵令嬢

そんな内心を包み隠してリリウムを手招き、持ってきて貰った朝食を一緒に食べることにする。

食べながら一応真面目に神学の話などするが、すぐに話題が尽きた。

食べ終えて、そのまま四方山話などをしていると外が騒がしくなり、いきなり入り口の布が跳ね上がった。


「おはよう、聖女殿!いい朝だな、今日は晴れそうだ」


「ラウラ様、おいで頂き恐縮でございます。

本日もラウラ様に、神の恵みがありますよう」


朝の突然の来客に、ヘリアンサスは椅子からすっと立ち上がり、深々と頭を下げた。

リリウムもそれに習う。


天幕へ入ってきた人物はラウラ・グラディウスという。

ラインの救援に駆けつけた王都の援軍の指揮官である。


出身は武門の誉れ高きグラディウス公爵家、その本家である。

グラディウス侯爵は現在もライン要塞で指揮を取っており、その令嬢である本人も武人として名高い。

鍛えた無駄のない長身を戦装束で包み、見るからに将の威厳がある。

色素の薄い肌に青い瞳が良く映えて、初めて見た時は宗教画の戦乙女を思い出したものだ。


姿勢がよく威風堂々たる風情だが、こうして笑っているとまるで普通の少女のようにも思える。

いざ戦が始まれば次々と敵を屠る腕利きの武人だということは、伝聞からも経験からも分かっているのだが。


ヘリアンサスは彼女を初め、武人相手には徹底して謙るようにしていた。

ただでさえヘリアンサスやそのお付き、神殿の者たちは戦力に数えられない上、いざという時は優先して逃さねばならない足手まといなのだ。

無闇に将兵の反感を買っていいことは何もない。


(まあ昔は聖女は王族相手でも頭を下げる必要はなかったそうだけれど。

如何せん神殿の方々の素晴らしい徳もあって、今や権威なんてあってなきがごとし)


脳内爺共の顔面に「けっっっ!!」と吐き捨てる。


そんな内心を知ってか知らずか、ラウラは笑顔で話を続ける。

同性だからなのか、初めて会った時から彼女は何かと気にかけてくれる。

ヘリアンサスはそれを有り難いと思っていた。色々な意味で。


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