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伝説の聖女

そろそろか、と彼は思う。

眼の前に相対しているのは伯爵だ。

傍らに夫人の姿もあるが、それ以外の貴族の気配はここにはない。


場所は晩餐の席、ではなく、私的に呼ばれた談話室である。

ここまで発展への支援を絡めた遠回しな説得を続けていたが、クロードアルトはここに来て新たな段階に入ることにした。

聖女をだしにして、更に一歩踏み込んでみる。


「聖女様の動向を見れば、天が何を志向しているかは明らかでしょう。

城下にも、段々と噂は広がっているようですね」

「そうですね。

そうでなくとも聖女様は現在、国中の注目の的でいらっしゃいますから。

我が領の場合は少々特殊なので、必要以上に不躾に見てしまった節もありご不快を与えてはいないかと案じられます」

「…………過去の経緯は承知しております。

ですがそもそも神殿とは、我が国において神聖なものであったはず。

それを再び呼び覚ませば、この地は一層神の祝福を受けるところとなりましょう」


クロードアルトが言及するのは、古く七百年前、カエルムが今の形と名前を得る前から、この地に伝えられてきた伝説だ。

それを思い出しながら彼は語る。

彼自身には大して信仰心は無いが、使えるものは使うまでだ。


「……あのような馬鹿げた神殿も、最早神の心に適うものではないはず。

管轄の神官から聞きましたが、費用不足によって解体もままならず放置されているそうですね。

あのようなものがあっては、融和の妨げになるだけでしょう。

そちらの始末も我々が、責任持って請け負うということでは如何でしょうか」

「それは有り難い話ですが……

元々我が領の揉め事が発端の話を、陛下にそこまでして頂くのは少々、畏れ多く……」

「伯爵。陛下は神殿が認め、聖女様が嘉した御方ですよ」


有無を言わせぬ口調で言い切る。

国王は神殿に認められた王であり、神の加護を受けている。

神殿に問題や遺恨があるならばこれに梃入れする。

それが神に認められた国王の権利であり義務であるのだ。言外にそう伝える。

穏やかな声音で、語り口で、巧みに彼は呼び寄せる。


「今こそ神殿との垣根を取り払い、新たなる神殿を生み出しましょう。

かつて、海上の嵐を鎮めた聖女――『恩典』のスピラエアの名において」



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