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頑張れなんて言われても

「歌姫ベアトリスについて、ですか?」


そう聞き返して首を傾げたのは黒髪男である。

情報をすり合わせるためにも定期的に席を設けようということで、今回はその初回だった。


「さて……私も、そう詳しくはありませんが。

確かに一時期、王都の劇場で活動していたようですし、それなりの人気も博していたようですね。

何度か雑貨や絵が売られていたのも見ましたし」

「それは、凄いですね。

王都でも活躍なさっていたとは」

「パトロンの力もあったようですがね。

……と言うか、確かそのパトロンは……」


そこまで言って、黒髪男はふと眉を寄せて渋面を作る。

そのまま少し黙っていたが、やがて声を落として話し出した。


「新しく、調べたいことができました。

私に任せて、そのまま長老の元にいて下さい。

最近の長老の様子はどうなのです。

その後変化はありますか」

「……それが、私たちへのいちゃもん?のようなこともすっかり止んで、大人しくなってしまって。

特に何かをした覚えもないのだけれど」


それを聞いて黒髪男は「そうですか」と微笑む。

使えるかも知れないと言わんばかりだ。


「このままですと、噂が真になるかも知れませんね。

神殿嫌いの頑固老人が聖女様の慈愛に打たれて、心を入れ替えたと。

色々脚色して市井に流布しておきましょうか。

きっと王国全土が聖女様を讃える声で溢れることでしょうね」

「止めて下さい」


噂が広がり過ぎたら、本格的に自分の手には負えなくなる。

いやそれ以上に、腐れ爺共がどれだけ調子に乗ることか。考えただけで頭痛がする。


「それにしても、中々面白い話でしたね。

市井の民にとっては、神殿の騒動には楽しみもあったと……思わぬ情報でした。

こちらも現伯爵夫妻と何かと交流はしていますが、肝心な部分はのらりくらりで」

「……結局、伯爵の意向はどうなのですか。

内通しているわけではなさそうですが、お話を聞くに何だかどっちつかずの印象を受けますが」

「実際そうなのでしょう。

不忠者の誹りは避けたいが陛下を大っぴらに支持もしたくない、そんな貴族は案外多いものですよ。

中立派の家だけあって、グレゴリウス公爵直々に貴族派への勧誘もしているようですし……

ドミニク伯爵も、心が決まりきっているわけではない。

なればこそ、長老を通して影響を与える余地があるのです。

神殿嫌いの長老を感化させた聖女様が、陛下を支持なさるとあらば、決め手として不足ないでしょう」

「…………そんなものですか」


そんなものです。ですから引き続き、頑張って下さいねと言われた。

何をどう頑張るのかはこちらに丸投げであった。



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