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黒髪男の依頼

ヘリアンサスだって当初、こんなのは真っ平御免だった。

わざわざ敵の陣地(暫定)に飛び込むようなものだ。

けれどこれにはのっぴきならない事情があるのである。


事は、某貴族ことアルビウス公にこの件を提案された日の夜に遡る。

どうにか一人になることができ、色々考えることがありすぎて疲労困憊していたところに、それはやって来た。

来客を告げられて嫌々支度をし、外で待機していた相手を招き入れる。


「失礼致します」

「……何ですか。何かお忘れ物でも……」


入ってきたのは、国王の側近である黒髪男だった。

傍に連れの気配はなく、一人きりだ。

彼は天幕に挨拶もなく踏み入った挙げ句、単刀直入にこう言った。


「アルビウス公の申し出、受けては頂けませんか」

「……理由をお聞きしても?」


早速とばかりに、昼間の件について言及される。

ヘリアンサスとしてはそんな要請、何としても断るつもりだった。

神託が行くなと言っているとか何とか御託を並べてでも。

それなのにどういうつもりだこの野郎と不審げにするヘリアンサスに構わず、黒髪男は「陛下から聞きました」と切り出す。


「中央貴族の中に、アルクスを裏切って敵国と通じている者があると語ったそうですね。

そしてその一人として、アルドル伯を名指ししたと。

アルビウス家の分家筋たる彼が裏切っているのならば、そこに公爵の意図がないということは考えられません。

ならば聖女様はアルビウス公を内通者とお思いであるはず。

なればこそ此度の提案は好ましからざるものでしょうが……」


その話か、と思い出す。

あの時語ったハッタリがここで響いてくるか。

そんなヘリアンサスに構わず、後を続ける。

「ああした提案を出したからには、公爵には公爵の思惑があるでしょう。

真実彼が裏切っているのならば、そして今回の提案もその謀略に織り込んでいるのならば、聖女様の訪れによって必ず尻尾を出すはずです」

「つまり私に釣り餌になれと?」

「そういうことになりますね。

ですが、互いに利害は一致しているはず。

護衛をつけますし、聖女様のお体に危害が及ばぬよう最大限配慮します。

これは聖女様にしかできぬこと、お引き受け頂けませんか」

「…………」


信じたわけではない。

こちらからすれば黒髪男が裏切っていないという確信も何も無いのだ。

それなのにその言葉に従えるはずがない、少なくとも心情的には。

だが、しかし。

黒髪男がこう言っているからには、ここで断っても国王の前で押し切られることは想像に容易かった。

寧ろここでゴネて警戒を悟られる方が危うい。

となれば答えは一つである。

うんざりしながらも諾を返そうとした時、黒髪男は更に言い募った。


「身辺の安全についてはご安心を。私も同道致しますから」


まあそんな風にして、敵の懐と思しき貴族の領内にこうして遥々やって来たのである。

どこもかしこも危険塗れのこんな世の中に誰がした。


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