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「ふええっ!?」
いきなり図星を突かれ、変な声が漏れる。
「ふふ、その反応は……正解かな?」
「あっ、えっ、いやっ、あうう……!」
恥ずかしすぎて何も言えない。何だろう。あたしってそんなに分かりやすい、だろうか。
「まあまあ。恋をするのは恥ずかしいことじゃないし、鎌実くんは良い男だからね。好きになっちゃうよね。仕方ないことさ」
「そうなんです!良い人なんです!……あたしにはもったいないくらい」
「……おや」
恋人のふりだけだったのに。彼が優しくしてくれるのも恋人のふりをしているからなのに。それなのに本気にしちゃって、好きになっちゃうなんて。
「常磐先輩にとっては……すごく迷惑だと思うんです、あたしなんかに好かれるの」
「そうかな。私にはそう見えないけれど」
迷惑に決まってる。あたしのせいで本当の彼女も作れないんだもの。
「でも、最初に恋人宣言したのは鎌実くんの方からじゃないか」
「あ、あれは……あたしが兄に色々言われて泣きそうだったのを庇ってくれただけです」
……そっか。恋人のふりをするようになったのは、兄がきっかけだったな。
それから家に泊めてくれて、帰りたくないってあたしが言ったから会長さんに連絡して住む家まで用意してくれて……。常磐先輩のおかげであたしは変われたし、あれから一度も家族のところには帰っていない。
「……ねえ宵子ちゃん。いいこと教えてあげようか」
そう言って、会長さんは悪戯っぽく笑う。
「い、いいこと……ですか?」
「鎌実くんって最初だいぶ性格に難アリだったんだよ」
「えっ……」
確かに、初めて出会った時は物凄くきつい言葉で責め立てられた気がする。まあ、正論だったんだけど。
「彼の性格が柔らかくなったのって、間違いなく宵子ちゃんのおかげだと思うよ。そもそも前の性格のままだったら恋人宣言なんてしなかったと思うな」
「そ、そうなんですか……?」
「そうだよ。彼のことをよく知っている私が言うんだから間違いないさ!」
楽しそうに笑いながら、会長さんはあたしの手を取る。
「……ああ。君に触ったって知られたら、鎌実くんに怒られちゃうかな。これは内緒にしてね」
「……!も、もう!からかわないでください……!!」




