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「……はい?」
思っていたものの3倍くらいハードな答えが返って、思わず聞き返す。
「私と鎌実くんは、父さんから命を狙われている」
一言一句違わず同じ答えが返ってきた。どうやらあたしの聞き間違いとかではないらしい。
「えっと……どうして命を狙われるんですか?会長さんは次期当主なんですよね?」
「だからだよ。父さんは自分よりも優秀な私が気に食わないらしい」
ええ……。思わず絶句してしまう。寧ろ家を継ぐものは自分より優秀な方がいいんじゃないでしょうか。家の血を絶やさないためにも。
「父さんは昔、姉と比べられたことがトラウマだったみたいでね。自分の地位が取られることに相当怯えてるようだ」
まあ、理解出来ないが理解出来た。……会長さんの命が狙われる理由は。
「だけど、常磐先輩がどうして狙われるんですか?」
やっぱり、常磐先輩が狙われる意味がわからない。奉日本家の関係者でもないのに。まさかとは思うけど恨みを買うような真似をしてしまった……とか?
「……ああ。彼は……奉日本の関係者なんだよ」
「ええっ!?」
まさか先輩も奉日本家の関係者だったとは。確かにあの時、お前は温情で生きることを許されている的なことを言われていたような。
「私とも血が繋がっているんだよ。まあ、ほとんど他人くらい遠いけれどね」
「そ、そうだったんですか……。それで、彼はどうして命を狙われているんですか……?」
一番気になっていることを聞くと、会長さんは少し悩んだような仕草をしてから、言った。
「……それは私の口からは言えない……かな」
……言えないようなことなんだ。少しゾッとする。
「ごめんね。でも、何があっても彼のことを嫌わないであげて欲しいんだ」
「……!そんなの、嫌うはずありません!!」
先輩に何があったかは知らない。だけど、何があっても嫌わない……そう断言出来る自信が、あたしにはあった。
「……ふむ、なるほど」
そんなあたしを見て、会長さんは再度考え込むような仕草をする。……何か、変なことを言ってしまっただろうか。
「単刀直入に聞いてもいいかな?」
暫く考えた後、彼はあたしに言った。
「宵子ちゃん……鎌実くんのこと、好きだよね?」




