10-9
「「……っ!?」」
耳を塞ぎたくなるような破裂音が2回して、二人して思わず顔を顰める。
「2回……!先輩伏せて!!」
鳴ったのは恐らく銃声だ。お前に言われなくとも伏せるつもりだった。だけどお前が急に抱きついてくるから伏せられなくて。
「……っ!」
もう一度音がしたかと思えば、俺に縋りつく九条皐月の身体の力ががくんと抜け、更にこちらにもたれかかってきて。……少し、重い。
「お前、いい加減に……っ!?」
──────なんだこれ。
赤い。どこまでも赤くて───────
「か、鎌実さ……ん、大丈夫、ですか……?」
「…………………は?」
「……ふ、ふふ……よ、よかった、あたし……守れて……」
「……っ! "あたし" って、お前、お前……まさか、」
……意味がわからない。
撃たれたのに、お前は何故笑っているんだ。
わからない。意味が、
……いや、違う。本当は気づいていた。何故、気づけなかった。
馬鹿な奴だと思った。
面白い奴だと思った。
可愛い奴だと思った。
いつの間にか、俺は彼女のことが……好きだった。
「……サヨ!!!!」
今度こそ守ると誓ったのに。
何度も。何度も。何度も。
「有り得ない……サヨ……サヨ……」
……守ると誓った?そんな記憶は俺には無い。
悪魔だ。こんな時に乗っ取りやがって。
このまま放っておいたら九条が。くそ、九条はお前のじゃない。九条はサヨなんかじゃない……!!
「鎌実くん!!」
……奉日本晴臣だ。どうやら相当焦っているらしい。今回ばかりはコイツも計算違いだったか。そんなことよりお前がさっさと出てこないせいでサヨが。……違う、サヨじゃない!!
「し、知らない……こんなルートは今までになかった……有り得ない……」
「ルート……?鎌実くん、君はまさか……」
……意識が、悪魔に持っていかれる。
駄目だ。サヨ……
九条─────────…………
第十一話に続く……




