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……そして、銭湯の掃除を始めるよろず部員達。
僕も正式な部員ではないけれど、掃除を手伝わせて貰うことになった。よろず部の活動に協力すること……それも晴臣様に指示されたことだったから。
「マジで疲れるんだけど……」
しかし、掃除が始まってすぐにブツブツ文句を言いながら直樹くんはしゃがみこんでしまう。
「やる気が無いならせめて黙っていろ。士気が下がる」
「はあ?ちょっと休憩しただけなんだけど?」
「ダンスが得意とかほざいてる割には体力は並以下のようだな。……ああ、それとも社長の息子……お坊ちゃんは掃除の仕方すら学んでいないのだろうな」
「それ、アンタにだけは言われたくないんだけど!!」
ど、どうしよう……!常磐先輩と直樹くんが喧嘩を始めてしまった。この二人の相性がとても悪いというのは晴臣様から聞いていたけれど……!
「はーい!そこまで!」
バシャン、という水の音がしたかと思うと、一時的に喧嘩は収まった。どうやら犬飼先輩が二人に水をぶっ掛けたようだ。頭を冷やせ、ということだろうか?上手い。
「「……チッ、」」
あっ、舌打ちがハモった。やっぱり仲良しだったりして。
それから二人は不服そうではありながらもちゃんと掃除を進めてくれた。
「そういえば、鮫島先輩は慣れてますね?」
動きが手慣れている人のソレだ。僕の問いに鮫島先輩は頷いて答えてくれた。
「ここの銭湯には世話になってるんだ。うちの風呂がよく壊れるからな」
「そうなんですか?」
「ああ、うちにはあまり金がねえ。だから風呂が壊れる度にここの銭湯に来るんだが、風呂掃除を手伝うとタダで入れてくれるんだよ」
「なるほど!だから慣れてるんですね」
「まあ、恥ずかしい話だがな」
あまり話したくないようなことだっただろうか。他所の事情に踏み込み過ぎたかもしれない。
「あーっ!大河!浮気しちゃダメだぜ!!」
「してねえよ!!」
僕と鮫島先輩の間に犬飼先輩が割り込んでくる。そして犬飼先輩はこちらに近づいてきて、コソッと僕に耳打ちしてきた。
「……大丈夫。大河そこまで気にしてないから。サラッと話してくれただろ?」
「えっ、あ……」
踏み込み過ぎたかもしれないと気にしていた僕のことを気遣ってくれたのだろうか。さっきも二人の喧嘩を止めていたし、実は犬飼先輩っておちゃらけているだけに見えて、案外回りをしっかり見ている人なんじゃ……。
「おい、お前も浮気すんなよ」
「してませんー!俺は大河一筋ですー!!」
「はっ、どうだかな。色んな女に手出してた癖に」
「ちょ、それはもう時効だろー!?お前と付き合ってからはもう誰にも手出してないって!!」
「まだ女と連絡取り合ってるの知ってんぞコラ」
「それはただの友達だから!!」
……前言撤回。やっぱり軽いだけの人かもしれない……ってわあっ!?
「な、なんですか!?」
頭から急に水をぶっかけられて辺りを見回す。
「お前らもサボるな」
「あっ、気が合うね。僕も同じこと思ってた」
どうやら水を掛けてきたのは常磐先輩と直樹くんのようだ。僕だけじゃなく、犬飼先輩と鮫島先輩もガッツリ水を被っている。
「ちょ、サネくん!将吾ちゃん!言ってから掛けんなよなー!」
「は?さっきの仕返しだけど?」
「おいコラ、仕返しって俺は何もやってねえだろうが」
「うう……僕、着替えてきますね……」
酷いずぶ濡れだ。幸いもう掃除も終わりそうだしさっさと着替えてしまおうと思って僕は一足先に浴室を後にした。




