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別に走らなくても間に合ったというのにコイツに付き合わされて走らされたせいで無駄に疲れた。
「は、はあ……なんか、すっごい、疲れましたね……」
「間違いなくお前のせいだな」
「うう……すみません……」
何故か俺よりも疲れており、肩で息をしている九条弟。そんなに体力が無いなら何故走ったのか。ため息をつき、近くに設置されていた自販機でお茶を買ってやった。
「あ、ありがとうございます……」
「落ち着いたか?」
「いつもいつも迷惑かけてすみません……」
「ふうん、迷惑をかけている自覚はあったんだな」
九条弟は気まずそうにお茶を飲んだ。普通にしていればいいものを。
「……あっ!」
かと思えば俺を放置して急に走り出す。何なんだお前は。俺が逃げないように学校まで監視するんじゃなかったのか。
「水鏡さん!」
九条弟が呼んだその名前には聞き覚えがある……というか、昨日会ったばかりじゃないか。そうだ、奴には聞きたいことがまだあったんだ。
「……おや?私と君は初対面の筈だが……」
「えっ、だって昨日……」
「いや、待て。そいつは違う」
確かに顔は水鏡まふゆにそっくりだ。しかし、昨日の奴とは雰囲気がまるで違っていた。
「お前、水鏡まふゆじゃないな?」
俺の言葉に目の前のそいつは不敵に笑うと、長い髪をかきあげた。
「ああ、成程。まふゆの方に会ったのだな。……そこの貴方の言う通り、私はまふゆじゃない。まふゆの片割れの棗だ」
そういえば奴も片割れがいるとか言っていたな。ということは、コイツが九条を抱き上げた方の水鏡か。
「……?どうしてそんなに睨まれるんだろう。私は貴方に何か粗相をしただろうか」
「……いや、別に」
自分でも無意識のうちに水鏡を睨みつけていたらしい。……何故か、腹が立ったのだ。理由は分からないが。
「……あれ?貴方はひょっとして……」
「……!ぼ、僕は九条皐月です!は、はは、はじめまして!」
「あ、ああ。はじめまして」
何であんなに慌ててるんだ、アイツ。相変わらず訳の分からない奴だ。
「ほ、ほら!そろそろ教室に行かないと!授業に間に合いませんよ!さあ早く!行きましょう!」
「は?おい、何なんだお前……!」
急に九条弟に手を引かれる。そもそも俺とお前とは学年自体違うだろうが。そう声をかける間もなく、俺は九条弟にまたもや引き摺られていく……。勘弁してくれ。




