10-1
「おはようございます!」
「…………」
今日こそは一人で行動しようと思っていたのに。待ち構えていたかのように九条弟が立ち塞がっていた。
「……今日も調べ物があるからな。学校に行くつもりは無い」
「それを止めに来たんです。今日は登校して貰わないと困ります」
そう言って仁王立ちする九条弟。ドヤ顔するな。
「お前に俺の行動を制限される謂れは無いだろ」
「晴臣様からの命令です。どうやら昨日の本家侵入が幸臣に勘づかれている可能性があると。僕達に対する警戒も強まってます。なのでなるべく怪しいところのないように普段通りに過ごして欲しいとのことです」
……何故、幸臣に勘づかれた?
一番考えられるのは昨日出会った怪しい奴……水鏡まふゆだが、水鏡が幸臣派だったとしたら幸臣の弱点になるような情報を俺に漏洩したりしないだろう。それに、奴の口振りからして本当に幸臣を憎んでいるように思えた。アレが演技で無ければの話だが。
とすると、次に考えられるのは九条弟だ。コイツは最初からずっと怪しい。何となく、九条に似ている気がして見逃していたが……コイツがずっと俺についてくるのは監視の為だと考えるのが妥当だろう。
しかし、幸臣派にしては行動が中途半端過ぎる。いったい、コイツは何を考えている……?
「さあ、早く制服に着替えてください。遅刻してしまいます」
……まあ、今考えても仕方が無い。とりあえずコイツから逃げられそうにないので、大人しく制服に着替えて登校することにしよう。
それにあの時、奉日本家に居た人間が俺達の侵入に気づいていた可能性もある。というかあれだけ騒げば普通、気づかれるものだと思うが。
……そうだ。何故、あの時誰にも気づかれなかったんだ?おかしいと思うべきだった。本家に不法侵入して、バレなかったという事態そのものがおかしすぎるじゃないか。
まるでわざと招かれていたかのような……。
「まだですかー!?早くしてください!!」
……思考はここまでにしておこう。本当に遅刻してしまいそうだ。まあ別に俺はそれでも構わないが、コイツが煩そうだ。
「……悪い。待たせた」
「待たせすぎです!ほら、行きますよ!」
「いや待て。何故手を繋ぐ?……おい!」
無理矢理手を繋がれ、引っ張られる。
「逃げない為です!」
「逃げるか!」
勘弁してくれ。変な目で見られたらどうするんだ。
しかし固く繋がれた手を振りほどくことは出来ず、俺は無理矢理学校へと引きずられていくのであった。




