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シン・ヨロズブ  作者: 有氏ゆず
第九話 夢に出てくる女が気になるんだが
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9-9




「……まあ、後はお察しの通りやと思うけど……」

「その時、沙雪が身篭った子供が……沙宵か?」


水鏡はもうひとくち緑茶を啜り、頷く。

奉日本家の下衆さは分かった。しかし、悪魔と沙宵の何処に接点があったのか……それが分からない。いや、悪魔が言うサヨが奉日本沙宵のことでは無い可能性もある。というか、その可能性の方が高いだろう。


それよりも気になったことがある。沙雪と沙宵のその後だ。愛していた娘が自分との子供を身篭ったのだ。さぞ、奉日本家では贔屓されたに違いない。……なのに、二人の存在がまるでない。




「……沙雪と沙宵がどうなったか、聞きたいん?」


お前の聞きたいことなどお見通しだと言わんばかりに水鏡が問い掛けてくる。腹立たしいが、事実なので頷いておく。


「まあ、子供なんて産んだら贔屓するやろうねえ。あの下衆は」

「ああ、それは分かっている。なのに何故二人の存在が何処にも無いんだ」

「ふふ、慌てたらあかんよ。よう考えてみい?当主になる筈の自分よりも、姉が贔屓されてたら弟……幸臣はどう思う?」


それは嫉妬するだろう。嫉妬で嫌がらせをするかもしれない。


いや、そんなのまだ可愛い方だ。ひょっとしたら自分の姉に当主の座を奪われるかも……と考えるかもしれない。男尊女卑の奉日本家とはいえ、奉日本純子という例外もいるんだ。もしかしたら女に当主の座を与えるような例外だってあるかもしれない。


そうすれば自分の立場は……


「……まさか」


そこまで考えて、ぞっとした。何故沙雪と沙宵は行方不明となったのか。そこから導き出される解は、ひとつしかなかったからだ。






「……幸臣が、ふたりを、消した……?」






導き出したくもない答えだが、もうこれしか考えられない。


「……その通りや」


そしてその解は、当たっていたようだ。……あまりにも胸糞が悪く、反吐が出る。


「正確には、沙雪は……殺された。病気ということで処理されたんやけど、毒殺された」

「そんな……酷いです……」


九条弟は気分が悪いのか俯いている。

しかし、気になったことがあった。沙雪は毒殺されたそうだが、沙宵がどうなったかは話に出ていない。


「……待て。娘の沙宵はどうなった?」


疑問を投げかけると、水鏡は首を横に振る。


「それが……分からないんよ」

「分からない……?」

「そのままの意味や。沙宵は姿を消して、行方不明になってしもうた」


奉日本沙雪の生死ははっきりしているのにその娘がどうなったか知られていないのも変な話だ。

普通に考えれば、沙宵も沙雪と共に殺されたと考えるのが妥当だろう。沙雪の娘である彼女も、幸臣にとっては邪魔な存在だろうから。




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