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「……常磐鎌実」
渋々名乗ると、何故か水鏡は目を見開いて驚いた。
「……ふーん、ほんまに生きとったんやねえ」
「何だ、それ」
「だってほら……」
「常磐鎌実って、悪魔の子って言われてる子やろ」
「なっ……!」
何故それを知っている。俺の正体は本当に一部の人間にしか知らされていない筈なのに。
「お会い出来て光栄やわあ。まあ、ほんまに70年近く封印されてたかどうかは怪しいもんやけど」
「……何故それを」
「あれ、ほんまやったの?ほんなら今90歳くらいなんやねえ」
「えっちょっと!それどういうことなんですか!?」
置いてけぼりににされていた九条弟が口を挟む。もう良いからお前は黙っていろ。
「寺本鍬夫と常磐ゆり子の子として昭和6年に寺本家で産まれた一人の男児がいた」
……何故。コイツ、どこまで。
「しかし男児が産まれる前に鍬夫は病気で亡くなってしまい、精神を病んだゆり子は実の子であるその男児の身体を入れ物に鍬夫を蘇らせようとした」
……嘘だ。それ以上は、やめろ。
「だけど儀式は失敗。それどころかかなり厄介なモノを召喚してしまって、男児の身体には悪魔が宿ってしまった」
…………っ!!
「男児は梢という女性によって殺害されたが彼に宿った悪魔はまだ死んでおらず、70年の時を越えて蘇った。そして奉日本晴臣率いるよろず部によって再度封印されたが……何故かまだこうやって生きている」
「それがあなた。常磐……いいえ、」
「……寺本鎌実さん、やんね?」




