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……さて、とりあえず奉日本家について調べることになったが、まずはどうするべきか。
「えっと、それで何を調べるんですか?」
ああ、そういえばコイツにはまだ言っていなかったか。……簡潔に説明しておこう。
「サヨという女について知りたい。俺と昔、面識があったのかもしれないが思い出せないんだ。恐らく奉日本家の関係者だからそこから調べたいんだが」
「じゃあ、手っ取り早く奉日本本家に行っちゃうのはどうでしょうか?」
「……馬鹿かお前は。本家に易々と入れる訳が」
「入れます。僕、晴臣様の遣いなので」
……確かに、コイツが晴臣の遣いだろうが、幸臣の遣いだろうが奉日本家の関係者という点は同じ。
いや、そもそも幸臣の遣いならばわざわざ本拠地である本家に侵入させるようなことはしないだろう。ということはやはり、コイツは本当に晴臣の遣いで、行方不明になった二人は無事だということだろうか。
「……どうしますか?」
それとも本拠地に誘い出して始末するつもりだろうか。……あそこなら人が死んでも、見つからないから。
「……行こう」
奉日本の本家なんざ近寄りたくも無かったが、仕方あるまい。自分の夢のことも気になるが、これでコイツがどっち側なのかハッキリするだろう。
……という訳でさっそく本家に到着した訳だが。何度見てもこの場所は不愉快だ。
「あの、本家が嫌いなんですか?」
「好きな奴なんて滅多に居ないだろうよ」
「そう……なんですね。僕はその、よく知らないもので」
この世で奉日本家を知らない奴がいるものだろうか。それはよっぽど世間に疎いか、奉日本家側の人間で詳細を話したがらないかどちらかだと思う。恐らくコイツは後者なのだろうが……。
それよりもどうやって中に入るかだ。一応、自分は "奉日本晴臣の友人" という立場なので遊びに来たと言えば簡単に入れるだろうが……出来れば向こうにこちらの情報を与えたくは無い。そして個人的に奉日本晴臣の友人を名乗りたくは無いし、そもそも奴は行方不明なのでそれを理由に追い返される可能性もある。
しかしこの本家、次期当主様の幼い頃からの趣味で秘密の隠し通路的なものが沢山作られているらしい。父親にもバレずに作るのは大変だったと本人から聞いた。
ならばその隠し通路を使うのが良いだろうが、流石に場所までは知らない。
「こっち、こっちですよ先輩」
「……は?」
どうするべきかと思考している最中に見当違いの方へと手招きする九条弟。
「ここに隠し通路があるんです」
「……!」
どう見ても壁だった場所がくるりと回転し、簡単に本家に侵入出来てしまった。
「……おい、何故お前がそんなこと知ってるんだ」
「あっ……あれ?何ででしょう?」
……誤魔化すのが下手なのにも程がある。晴臣から聞いた、とでも言い訳しておけばいいものを。
しかし、コイツが幸臣側だとするとこの通路も既にバレている可能性が高い。慎重に行動しなければ。




