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「……何だ、これは」
確かに俺は何をすればいいかとは聞いた。そして九条弟はそれに対して答えた。
「何って、校庭の草むしりですけど」
「そんなことは分かってる。何故今やる必要があるんだと聞いているんだ」
「よろず部に来た依頼ですから仕方ないでしょう?」
「そういうことじゃない!話が通じない奴だな……!!」
あまりの鈍臭さにイライラが募る。そんな俺の様子を見て、九条弟は溜息をついた。わざとらしく。
「喧嘩売ってんのかお前」
「違いますよ。これも晴臣様からの指示なんです。敵に嗅ぎつけられないようにいつも通り過ごすように、と」
「……敵?奴らは危険な状況にあるのか?」
「晴臣様のことなら大丈夫です。何か考えがあるようですので……」
「そいつのことじゃない」
奉日本のことなどハナから気にしてもいない。アイツは殺しても死なないような奴だ。事実、何度も命を狙われていたがその度ケロッとして生還している。
「それよりも九条は……」
「あっ!かまおくーん!!」
一番聞くべきことを聞く直前で邪魔をされる。前にもこんなことがあったな。呪われているのか?
「どうした、楪有翔」
「もー!フルネームで呼ぶのやめてって言ったでしょ!」
「弟と被るだろ」
「だったら有翔って呼べばいいじゃん!」
「断る」
こんな話がしたい訳じゃない。面倒なのでさっさと追い払ってしまいたかったが、また余計な奴が増えてしまった。
「手伝いに来たぞ、常磐」
「神凪古……わざとか?」
「……何の話だ?」
どうやら話を中断させたかった訳では無いようだ。奉日本なんかは普通にそういう手を使ってくるのでつい警戒してしまった。
「二人じゃ草むしり大変でしょー?ぼくらも一緒にやるよ!」
「そういうことだ。感謝しろ」
どうやら居座る気らしい。ありがた迷惑だ。
仕方ない。またタイミングを見計らって聞き出すとしようか……。
「……それで、姉さんのことですか?」
……おい、話を続ける気か。確かにコイツらも部員である以上、奉日本からある程度の話は伝わっているだろうし隠す必要もないだろうが。人前だと話しづらいだと思って気遣ってやったというのに。
まあ良い。向こうから持ちかけてくれたんだ。それに乗っかるとしよう。




