7-7
「え、えっと……あれ、やりませんか」
とにかくこの空気を変えたくて、適当なゲームを指差す。
「クレーンゲームか?やったことないぞ」
「あ、あれ欲しいんです。サカバンなんちゃらの巨大ぬいぐるみ」
特に欲しくもないぬいぐるみを言ってみた。それくらいこの気まずい空気に耐えきれなかったのだ。
「いや、これは取れないだろ」
「あ、あう。そうですか……」
もっと取りやすいぬいぐるみを言った方が良かったかもしれないが後の祭り。欲しくもないぬいぐるみのせいで、余計に気まずくなってしまい、いたたまれなくなったのか先輩は一人で立ち去ってしまった。
……帰っちゃったのかな。
一人残されて、呆然とする。
「あ、はは……そうだよね……」
思わず、笑いと涙が同時に溢れ出た。
今日だって、先輩は "会長" に言われてたから来てくれたんだ。今まで恋人の振りをしてくれていたのも、 "会長" に言われてたから。
せっかくの日曜日なのに、やりたいこともあっただろうに、あたしに付き合わせてしまった。せめて、先輩に不快な思いをさせないようにあたしは振る舞うべきだったのに。
ああもう、これだからあたしはダメなんだ。変わるって決めたのに、何も変われてない。
結局あたしは、兄の言葉に呪われて、ずっとこのままなんだ……。
「……ったく、取ってやればいいんだろう」
「えっ!?」
……先輩、帰ってなかったんだ。
予想外の展開に唖然とする。
「泣いてたのか?……泣くほど欲しかったのかよ」
「えっいやこれはちが」
慌てて涙を拭いて、先輩を見ると……手には大量の小銭が握られていた。
「……あの、何処行ってたんですか……?」
「両替に決まってるだろ。相当の金額を使うことは目に見えているからな」
ああもう。この人はやっぱり……。
嬉しくて、それでも彼に心配はかけたくなかったから彼には見えないように、あたしはもう一度涙を零した。




