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だけど、気分はなかなか晴れなかった。
自分みたいな人間が、彼のような素晴らしい人間を独占しようだなんてあまりにも失礼過ぎる。こうやって一緒に居てくれるだけでも幸せなことだというのに。
恋心に気づいた時とは真逆で、あたしの心には黒いモヤがかかったようだった。
そもそも、好きだと気づいたところでどうするの?告白するの?あたしなんかが?
きっと断られるに違いない。
でも、断られることよりも彼に気を遣わせてしまうであろうということが、とても怖い。
『お前なあ!身の程知らずにも程があんだろ!ブスがどんな格好したって変わらねえんだよ!』
常磐先輩があたしを庇ってくれたあの日、兄に言われた言葉が反響する。
そう、身の程知らずなのだ。あたしがどれだけ変わろうと、元々ゴミだったものはゴミのまま。
やだ。そんなのやだ……。あたしだって、恋愛がしたい。諦めたくなんてない。
だけど、あたしなんか……
「……サヨ!!」
割と大きめの声で常磐先輩に呼ばれ、はっと我に返る。
「もう、俺のことを置いていくな」
真っ直ぐに目を見つめられ、そう告げられる。
置いていくなって、何処に?あたしはあなたを一人にしてしまったことが、あるの……?
「……?何を言っているんだ、俺は」
しかし当の本人も無意識のうちに出てしまった言葉のようで、首を傾げていた。
「……もう。あたし、サヨじゃないです。女の子の名前を呼び間違えるなんて、一番やっちゃいけないことですよ」
……あ。今のはちょっと、失敗したかもしれない。気まずい空気が流れる。




