1-5
「お前が九条宵子か」
「……はい、そうですけど」
よろず箱に依頼を投函した次の日、学校へ登校するとあたしのロッカーに手紙が入っていた。
そしてその手紙には放課後に駅前の喫茶店に来るようにと指示が書いてあった。ご丁寧に何処の席に座るかも指定されていた。
そして、指示通りの席で座って待っていると……目の前に男子が現れた訳で。
顔は見たことない人だった。先輩だろうか。まあ、同級生だったとしても別クラスだったら分からないけど。
「依頼内容は、ストーカーに付け回されているから恋人の振りをして欲しいんだったか」
「……まあ、そうです」
嘘をつくのは心苦しいが、そういうことにしてしまった以上今更引くことは出来ない。
「ふうん……」
彼は大して興味も無さそうに返事をする。……まさかとは思うけど、この人があたしの彼氏の振りをするってことなんだろうか。嫌だな。性格キツそう。目つき悪いし、ずっと眉間に皺寄ってるし。
「嘘だろ」
「……え?」
思わぬ言葉が飛んできて、あたしは思わず聞き返してしまった。
嘘がバレたってこと……?
「まず俺に話しかけられた時のお前の反応。あれはどう見てもストーカーから逃げたいようには思えなかった。本当にずっと付き纏われているんならいきなり知らない男が自分に接触して来たらもっと怯えてもいい筈だろ」
詰められるように理由を述べられ、あたしは何も言えなくなる。だって言い返せる訳が無い。あたしは嘘をついているのだから。
「それとその身なり。悪いけどストーカーされているようには思えない」
「…………!」
それは母にも指摘されたこと。こんなブスがストーカーなんかされる訳ないって。
それはあまりにも図星で、もうこの場から逃げ出したかった。