6-12
……時を同じくして別の場所では。
「……久しぶりだね、父さん」
「相変わらず不快な笑顔だなお前は」
珍しく父さんが本家へと帰って来た。いつもは愛人の元に居て、こちらには滅多に来ないというのに。
……それはつまり、私に何か用があると言っているも同然だった。
「前置きは良いよ。私に何か用なんだろう?」
「……ふん。その余裕ぶった態度も私をイラつかせる」
「そうかい。父さんに似たんじゃないかな」
私はにっこりと笑って告げると、父さんは不快だと言わんばかりに舌打ちをした。あまりにも分かりやすい。
「あまりお前と話していたくないのでな、用件だけを言おう」
最初からそうすれば良かったのに。私達は親子の会話を楽しむような関係では無いのだから。
「……九条宵子を、始末しろ」
……うん。そういうことだろうと思ったよ。
きっと私が既に彼女と接触したことも、父さんにはバレているんだろうね。まあ、隠したところで意味は無いと分かっていたから、挑発の意味も込めて堂々と接触してやったんだけどさ。
確かに九条家はうちの家系の血は継いでいるけれど、それほど血は濃くない。それどころかほぼ他人レベルに離れている。
そんな家系の女を始末しろなんて、普通なら言う訳無いよね。だって、彼女と父さんには何の接点も無い筈なんだから。
……まあ、彼女が "本当に九条家の娘なら" ……って話なんだけど。
真実を知る為に、私は敢えて自分の動きを父さんに見せつけてやったんだ。
《バレた》んじゃない。
敢えて、《バラしてやった》のさ。
彼女を、堂々と消す為にね。
「お前は奉日本家次期当主となる男だ。甘えは捨てろ。……出来るな?」
父さんの言葉にとびきりの笑顔を顔に貼り付け、返事をする。
「九条宵子を消せばいいんだね。……出来るよ」
さて……父さんからの許可は出た。
後は、彼女に会いに行くだけ。
「やっと "俺" として出会える。楽しみだなあ」
「……✕✕ちゃん」
第七話に続く……




