6-9
……という訳で、あたしは今自分の家の前にいる。山田さんと一緒に。
隣の部屋は常磐先輩だ。今在宅中かどうかは分からないが、あまり騒いだら怒られるだろう。まあ聞こえるほど壁は薄くないだろうけど、用心するに越したことはない。
「ここに居るのだな?」
「まあ、居ると思います」
……外出していなければ。だとしたら鍵は彼が持っているだろうし、あたし達が家に入れないことになる。ちゃんと家で待っていることを祈るしかない。
ぴんぽーん♪
覚悟を決めて、チャイムを鳴らす。
まだここが自分の家だと思えないし、変な感覚だ。
「おう、誰だァ」
返事と同時に扉が開く。良かった。ちゃんと家には居てくれたみたいだ。
「……見つけたのだよ!」
「……!げっ」
……開いた扉が、瞬時に閉じられてしまった。
「ええっ!?ちょ、ちょっと!何で閉めるんですか!!」
「出て来るのだ神々廻黎一郎!!もう逃がしはせぬぞ!!」
ドンドンと扉を叩く山田さん。しかし黎一郎さんからの返事は無い。というか、フルネームで《ししば れいいちろう》さんっていうのか。
「嫌だねェ。俺ァ、見せモンになる仕事なんざ受ける気はねェぞ」
「仕事を選り好みするでない!!何度逃げ出せば気が済むのだ貴様は!!」
「ま、待ってください……!!」
流石に廊下でこんなに騒げば隣の部屋である常磐先輩には丸聞こえだろう。それは困る。すっごく困る。絶対嫌味言われそうだし、何より先輩に嫌われるようなことは……その、あんまり……したくない。
「と、とりあえず静かにしましょう。近所迷惑になってしまいます。だからえっと……中に入れて貰えませんか?部屋の中でゆっくりお話すればいいと思うので」
「う、うむ。すまない。怒りで我を忘れていたようだ」
あたしの説得のおかげか、ゆっくりと扉が開いていく。……良かった。これでとりあえず家に入れ……
「あァ、サヨコだけなら入れてやらァ」
……扉が開くと同時に、中から出てきた手にあたしの腕が捕まれ、引きずり込まれた。
何が起きたか分からず呆然としていると、黎一郎さんによって扉が閉められる。……ご丁寧に鍵まで掛けて。
「……えっ?」
「てなワケだ。とっとと帰ンな、田中」
「なっ……!謀ったな貴様ァァァ!!!!」
扉の向こうで山田さんが騒ぐ。
「後、我は田中ではなァい!!山田なのだよ!!」
「へえ、そうかィ。前は氷室とかナントカ名乗ってなかったかァ?」
「う、うぐぐ……!その名はもう捨てたのだよ!!」
ああ、煽らないで……!そしてこれ以上騒がないで……!!
しかしこうなるともう、あたしが何を言っても言い争いはおさまる気配がなかった。すると、あたしが最も恐れていたことが起こってしまう訳だが……。
「煩い黙れ」
……ああ、やっぱり来ちゃった。
不在であることを祈っていたけれど、そんな都合のいい話がある訳がなかったのだ……。




