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「いえいえ!こっちも今人が家に居るのでなるべく家に帰りたくて。だから謝らないで貰っても大丈夫というか、むしろラッキーなので!」
『そうですか?お客様がいらしていたんですか』
「まあお客様というか、ホームレスというか」
あ、良いこと思いついた。
よろず部の人達に黎一郎さんのことを相談してみよう。酷い怪我もしてたし、このままうちで放置するよりはよろず部に助けて貰った方が良いかもしれない。
『ホームレス……!?』
「ホームレス、だと!?」
そんなことを考えていたら、電話越しの楪さんの声と目の前にいる山田さんの声が被った。
わあ、奇跡……だなんて呑気なことを思っていると。
『そ、その!九条さん!そのホームレスの方について詳しく教えて貰えませんか!?』
電話越しで激しく捲し立てる楪さんの声が聞こえる。
「ま、ま、まさか!そのホームレスとは彼奴ではなかろうな!?」
そして目の前の山田さんまで。
うむむ。二人で一斉に話されたら何を言っているか聞き取りづらい。
と、とりあえずそのホームレスのことについて聞きたい……んだよね?特徴を話せばいいかな。
「ツートンカラーの髪をポニーテールにしてて、服装は蝶の羽の柄っぽい羽織にジーンズですね。ちょっと変な格好をしてて……」
話し終える前に電話の向こうから大きな溜息が聞こえる。勿論、目の前からも。
『はあ……やっぱりですか……。まさか、そっちにお邪魔していたなんて……』
「やはりか……彼奴はあまりにも自由人過ぎるのだよ……」
「あ、あの……ダメでしたか……?」
『いえ、むしろこちらから謝罪をしたいくらいです。……とりあえず、山田さんに代わって頂いても?』
「あ、はい……!」
あたしは慌ててスマホを山田さんに返した。
「……うむ。承知した。いや、問題あるまい。彼女と共に迎えに上がるとしよう。ああ、そちらも仕事で忙しいだろう。気にするでない。ではまた……な」
そう言って山田さんは通話を終了する。
「……さて、誠に申し訳ないのだが貴様に頼まなければならないことが出来た」
「な、何でしょう……?」
何となく、嫌な予感がする。こういう時の予感って絶対当たるんだよね……。
「我らが探している行方不明の部員……それがどうやら貴様の住処に厄介になっている男らしい」
「ですよね!もうこの流れで何となくそうだと思ってました!!」
「理解したのなら話が早い。我と共に彼奴を連れ戻しては貰えぬだろうか?」
嫌と言っても無駄なことは分かっていた。
だってその部員はあたしの家にいるんだもの。拒否したところであたしが家に帰れなくなるだけだ。
「分かりました!行きましょう!」
あたしは半ば投げやりにそう返事するのであった。




