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「!?」
「……!寺本……!」
突然背後から声をかけられ、あたし達は同時に振り返る。そこにはおかっぱの大人しそうな男子がこちらに向かって笑顔で手を振っていた。
「あなたが九条さんですね?私は寺本明臣。よろず部の一員です♪」
そう言って寺本先輩はにっこりと笑ってみせる。人懐っこそうな笑顔だ。
「……おい、こいつの胡散臭い笑顔に騙されるなよ」
常磐先輩が不機嫌そうに口を挟んでくる。
「もう、胡散臭いって何ですか。愛らしいって言ってくださいよ。それはそうと……だいぶ見た目は変身させちゃったんですね、可愛いですよ」
「あっ……」
常磐先輩と二人だったから、油断していた。あたしはささっと前髪を元に戻す。目が見えないように。
「ああ、可愛かったのに。残念です」
「……はっ、どうやらお前には見せたくないようだな」
「何それマウントのつもりですか?気持ち悪いですよ」
「なっ……!くそ、これだから奉日本は……」
「私は寺本に追いやられたので奉日本じゃありませーん。全く、これだから童貞は……」
すっごい!常磐先輩とやり合ってる!
会話の内容は殆ど理解できなかったけれど。思わず二人をじっと見つめていると常磐先輩に舌打ちをされた。あっ、眉間の皺が増えちゃってる。
「……それで?天下の奉日本様が俺なんぞに何の用だ?」
「あっ違います。用があるのは九条さんの方なので。……もしかして、結構自意識過剰だったりしちゃいます?」
「……なら俺は出ていく。俺に用が無いなら同席の必要は無いだろう?」
「えーもう、拗ねないでくださいよ。ちゃんと用はありますから」
クスクス笑いながら寺本先輩は一枚の紙を取り出す。そこにはこう書かれていた。
《奉日本家主催!ヨロズパーティ!!》




